早くも「トランプ」余波、ドイツ連立政権が崩壊 保護主義による輸出産業への影響を懸念し対立

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ドイツは日本を抜いて世界第3位の経済大国となったが、昨年主要先進国で唯一のマイナス成長を記録し、今年も2年連続のマイナス成長となる可能性がある。

過去数年のドイツ経済の低迷は、歴史的な物価高や大幅利上げなどの循環要因に加えて、さまざまな構造要因が重なったものだ。

構造要因には、脱ロシア・脱化石燃料を急ピッチで進める過程での企業のエネルギー負担上昇と産業空洞化の進展、中国の経済不振と電気自動車(EV)対応の遅れによる自動車産業の苦境、財政健全化を優先した長年の投資不足によるインフラ老朽化、高齢化の進展と人手不足、産業の新陳代謝やイノベーションの弱さなどが挙げられる。

こうした構造問題に対する政策対応は、現政権が続く限りは、財政規律の呪縛と連立政権内の不協和音で期待できず、経済停滞が長期化する恐れがあった。

政策停滞を早期に打開できる可能性も

今回の連立崩壊は、経済悪化に政治混乱が重なり、安定を重視するドイツの地盤沈下を印象づける。それと同時に、総選挙が前倒しされることで、連立政権のレームダック化による政策停滞を早期に打開する可能性も秘めている。

当初の予定通り、来年秋に連邦議会選挙が行われていた場合、連立協議は難航が予想され、ドイツ経済の再建に向けた政策対応が出てくるのは2026年以降とみられていた。

政治不安の先に、ドイツ再建の道筋が描けるのか。次期政権下の債務ブレーキの変更に向けた憲法改正、気候変動対策の推進と産業競争力強化の両立、トランプ再登板によるアメリカとの貿易摩擦への対応などに注目したい。

田中 理 第一生命経済研究所 首席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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