深谷で「映画と珈琲」を楽しむレトロ散策のすすめ 酒蔵建築や映画ロケ地で「時空を旅する」気分に

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旧・中山道に面した950坪ほどの敷地には、母屋、店蔵、煉瓦造りの精米蔵や煉瓦煙突などの建物があり、これら建物は現在商店やイベントスペースとして生まれ変わった。11店舗が入居している。

なかでも一際目につくのが、「深谷シネマ」。全国でも唯一の酒蔵を改装した映画館である。グレーの瓦屋根に白壁が印象的な昔ながらの建物。一目見ただけでは映画館とは気づかないかもしれない。ふと目をやると木目が残る看板にミントグリーンの豪快な文字で「深谷シネマ」と記されている。看板でさえ、まるで風景の一部のようだ。

瓦屋根の深谷シネマ。上映する映画のポスターなどが貼られている
2024年現在の深谷シネマ入り口部分。元は酒蔵と馬小屋だったそう(撮影:永見薫)

中に入ると、明るく白壁に覆われた心地よい空間が広がり、所々に蔵の柱が残っている。左手には市民スペースがあり、右奥には57席のシアタールーム。チケットカウンターをふと見上げると、そこに並ぶのは数々の映画関係者のサイン。

吉永小百合や故・樹木希林などのサインも目にすることができる。俳優らの言葉の数々からは、深谷シネマへの愛情がじわりと滲み出ている。

直筆サインが並べられている様子。故・樹木希林の写真も飾られている
山田洋次監督や故・樹木希林始め、数々の映画監督や俳優のサインが並ぶ(撮影:永見薫)

上映作品はスタッフによるチョイスと、顧客からのリクエストで成り立ち、メジャーなものから、単館系のものまで幅広く揃う。この日も朝から近所に住まう方が足を延ばし、思い思いの時間を過ごしていた。

見渡せば歴史のある建物と風景に、静寂に包まれた空間。穏やかな時が流れている。過ごせば過ごすほど時空を旅しているかと錯覚する。

映画文化と酒蔵建築を残したい思いが合致する

映画館が全国に多数存在していた頃。深谷市にも豊年座、ムサシノ館、電気館と3館が存在していた。しかし時代の変化とともに全て閉館し、市民が気軽に映画館へ足を運ぶことが難しくなった。

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