石破新政権にいっそ忘れてほしい「デフレ脱却」 今や国民が求めているのは「インフレ脱却」

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そうこうしている間に石破氏が自民党総裁選後の会見で述べた「デフレからの完全脱却は首相就任後3年間で達成する」との発言が重くのしかかってくるだろう。

率直に言って、一連の石破発言の中で筆者が最も気になったのがこの発言である。類似の発言として「2年でマネタリーベースを2倍にしてインフレ率を2%にする」という黒田日銀の発足直後のスローガンを思い出したのは筆者だけであろうか。

周知の通り、期限を明確に区切ったことで無理筋な政策運営を強いられた黒田体制の晩年は悲惨であり、その後始末に苦心惨憺しているのが現在の植田体制である。

デフレ脱却した現状は「インフレ税」

確かに石破氏が述べる「最低賃金を2020年代中に全国平均1500円に引き上げる」という方針を通じて、名目賃金の押し上げはある程度叶うかもしれない。

だが、インフレにより名目価値が押し上げられるだけでは「デフレからの完全脱却」を意味しないことは現状が証明している。

インフレは民間部門の消費・投資意欲を奪い、政府部門の財政再建に貢献する。事実、2020年以降の政府財政が顕著に改善している。

一般政府の純債務残高(%、対名目GDP)は2024年6月末時点で約86%まで低下している。90%を割り込んだのは、2009年6月以来、実に15年ぶりの話だ。

いわゆる「インフレ税」が発動している状況だが、それは石破新首相が配慮する「持っていない者」へとりわけ大きなダメージを及ぼす経済現象である。

通貨安経由でインフレがぶり返しやすい今の日本において、政府が「デフレからの脱却」を強弁すると、その意図がどこにあるにせよ、「インフレ税で政府財政を改善させたかったのか」という、あらぬ嫌疑に帰着しやすい。3年間という刻限が迫るに伴って「まだ、国民感情としてはデフレ脱却など済んでいない」という反感も出やすくなるだろう。

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