マルチスピード化する世界の中で 途上国の躍進とグローバル経済の大転換 マイケル・スペンス著/土方奈美訳 ~変化を促す政策こそ成長の源泉

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環境問題や為替システムなどグローバルなガバナンス・システムに、新興国をいかに取り込むかについても包括的に論じる。既に新興国の経済規模が相当に大きくなっているため、新興国抜きでは多くの国際的な問題は解決できない。むしろ、新興国が相応の国際的責任を引き受けなければ、世界経済の不均衡は蓄積し、周期的な危機も避けられなくなる。

日本に関する記述は少ないが、本書を読むとなぜ停滞が続いているのか原因がはっきりと見えてくる。既得権への配慮から、世界経済の環境変化に対応した制度改革を日本政府が怠ってきたのである。果敢に構造改革を進める新興国からわれわれが学ぶべき点は多い。

真の国益は、既得権の擁護とは異なる。TPP参加に反対する政治家に是非とも読んでもらいたい一冊である。

Michael Spence
米スタンフォード大学フーバー研究所シニアフェロー、米ニューヨーク大学スターン経営大学院教授。1943年生まれ。米ハーバード大学、スタンフォード大学経営大学院、世界銀行成長開発委員会委員長などを経る。2001年にノーベル経済学賞を受賞。

早川書房 2625円 372ページ

  

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