アルファベットは、生成AI関連のプラットフォーム事業は順調な一方、今後のAI関連設備投資増などによる収益性悪化が示唆され、嫌気された。CEOのスンダー・ピチャイ氏は決算発表後の会見で、「過少投資のリスクは過大投資のリスクよりもはるかに高い」と述べた。
「AI投資は将来的に大きなリターンが得られる」と多くの経営者が考えており、投資家も納得はしている。ただ、リターンを早く求める投資家も増えているようだ。膨らんだ市場の期待と現実とのギャップを縮めるタイミングとなった。
一方、メタ・プラットフォームズやアップルの株価は、決算発表後もまずまず堅調に推移した。
メタはAI機能が広告収入や利用者数の増加に寄与していることが評価された。同社も大型投資を行っているが、投資成果が目に見え始めたことがアルファベットとの違いにつながったようだ。アップルは「AI新機能の展開によって今後、数カ月でiPhoneのアップグレードに弾みがつく」との見通しを示したことが、投資家からの期待をつないだ。
2018年末相場との類似性
前段でアメリカ7月雇用統計に触れたが、筆者はこの雇用統計だけで「リセッション開始」を指摘するのは早計だと見ている。天候要因の休業者が43.6万人(季節調整前、前月は5.9万人、前年同月は5.3万人)と、イレギュラーな影響は無視できない。
とはいえアメリカ景気が鈍化に向かっているのは事実であろう。市場が警戒を強めるのも無理はない。
この状況は2018年末に似ている。市場が景気減速への警戒感を強める中、同年12月のFOMC(連邦公開市場委員会)でFRBのジェローム・パウエル議長がタカ派姿勢を崩さず(オートパイロット発言)、もともと下がっていた株価がFOMC後にさらに下落した。
アトランタ地区連邦準備銀行が発表するアメリカGDP予想のGDPナウは当時、2%を超えており、「足元の景気はまだよいが先々が心配だ」という状況は現状ととてもよく似ている。
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その後、2019年1月のFOMCでパウエル議長は政策スタンスをハト派に変え、アメリカ株式市場は平穏を取り戻した。緩和的な金融政策によって、リセッション入りすることも免れた。
こうした経緯を踏まえると、足元の株価変調は、FRBの「ビハインド・ザ・カーブ(対応の遅れ)」を警戒するきっかけとなりそうだ。今後は保有資産圧縮(バランスシート縮小)策の一時停止や、早期の利下げ(または利下げ幅の拡大)などの議論が進むだろう。
FRBの金融政策による景気の下支えが見られればソフトランディングへの期待は回復し、アメリカ株式市場は底抜けを回避できるものと考えている。
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