「土日の部活動を減らしたい」中高生の本音が判明、望ましい運動のあり方とは 地域移行、子どもたちの声は届いているのか?
運動部活動への加入率も変化しており、2015年からの年次推移を見ると、中学期・高校期の男女ともに減少傾向にある。中学校期男子は2021年まで70%台だったが、2023年には64.1%に低下、中学校期女子は49.8%と50%を切った。高校期男子は2023年に52.1%まで減り、高校期女子は34.4%と低い加入率となった。鈴木氏は、次のように分析する。
「少子化に伴い、野球やサッカーなど人数が多い種目は部活が成り立たない地域も増えています。そうした受け皿の減少のほか、部活動の強制加入が減っていること、部活動ではなく外部のクラブチームに入る子が増えたことなども加入率に影響していると思います。また、2019年に理想の部活動について調査したところ、一番多かった回答が『体を動かすことを楽しむ』(47.7%)、次いで『自分のペースで活動できる』(35.6%)でした。勝ち負けにこだわる子は15%程度。本当は楽しくスポーツをやりたいけれど、勝利至上主義の方針で活動している運動部もあるため、自身の考え方が合わないと感じて加入しない子も多いのではないでしょうか」
「土日の部活動」は減らしたいと思う中高生たち
今回の調査では、部活動の実際の活動状況(以下、実状)と本人の希望も聞いている。まず中学校では、「平日はおおむね希望どおりに活動できている」(鈴木氏)ようだが、土日の活動状況は、実状も希望も「1日」の割合が最も高く、70%を超えた。実状と希望の差を見ると、「0日」は希望が7.2ポイント高く、「2日」は希望が7.9ポイント低い。今より土日の活動日数を減らしたいと考えている中学生が一定数いることがわかる。

高校では、週当たりの活動日数は「5日」が実状(38.5%)と希望(35.6%)ともに最も高かった。また実状と希望との差を見ると、「6日」は実状よりも希望が5.3ポイント、「7日」は5.5ポイント低かった。一方、「3日」と「4日」はいずれも希望が実状を上回り、高校の週当たりの活動日数は実状が希望よりも多い傾向が示された。
土日の活動状況も、中学校と同様に「1日」の割合が実状と希望ともに最も高い。また、「2日」の割合は実状より希望が17.4ポイント低く、「0日」「1日」は実状よりも希望が5ポイント以上高い。高校生の土日の活動日数は、実状と希望に大きな乖離があるようだ。
「中・高生ともに土日は活動日数を減らしたい生徒が一定数いるということです。活動時間についても、中学校期・高校期ともに土日の活動時間は希望より長く、高校期は平日も希望より長いと感じている傾向が確認できました。『希望より長い』と感じている生徒は『勉強との両立ができない』『自由時間が少ない』との回答が多い傾向が確認されました。放課後の勉強や友達との交流、アルバイトに時間を割きたいけれど、部活動が長時間あるからできないと感じているのでしょう。今の子どもたちはスマホを持っていることもあり、さまざまな情報に触れる機会が多く、興味関心の対象の幅が広がっていることも大きいと思います」
活動日数・時間の削減や、選択肢の提示が必要
では本来、子どもが健康であるためには、どのくらいの頻度や強度、時間での運動・スポーツが望ましいのか。スポーツ庁では部活動ガイドラインで週2日以上の休養日(平日1日、週末1日)設定を推奨しているが、「これは海外のスポーツ医・科学関係機関の提言を参考にしているため、国内の中高生にとって適切な頻度かは本人の意向も踏まえて検証の必要があります」と鈴木氏は言い、こう続ける。
「今回の調査では、高頻度かつ高強度で部活動を行う青少年は健康状態もメンタルヘルスも良好だという結果が出ましたが、だからといって全員に高頻度・高強度での運動が推奨されるものではありません。重要なのは、個人の体力や志向に合った運動や身体活動を行うこと。健康増進を目指すなら、厚生労働省が示す『1週間を通じて、1日平均60分以上』という基準が指標になるでしょう。月曜日に120分身体を動かして火曜日は休み、それ以外の曜日は60分ずつやるなど強弱をつけても大丈夫です。強度については何もしないより少しでも身体活動を行うことが推奨されています。ただ、上達を望むなら、専門的な練習やある程度の時間を取る必要があります」