甲子園常連「マンモス私学」の元教員が明かす意外な給与額と公立教員妬む真意 年収300万円で住宅ローンも組めない現実

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一方で、校内には少なからず不協和音が生じていた。とくに、ほかの運動部顧問の教員は「面白くない」と漏らしたという。同じく全国大会で活躍しても、野球部とは“扱い”が違うのだから当然だろう。

「でも、反旗を翻す人はいなくて、『“上司”の命令には従うしかない』という感じでした。教職員組合があればまた違ったのでしょうが、そんな活動は難しかったですね。私が入ったときも、『組合はつくろうと思わないほうがいい。いられなくなった先生が何人もいる』と先輩教員が耳打ちしてきたほどでした」

ちょっとしたミスで降格人事が行われるような環境の裏返しで、学校内で少しでも影響力を拡大しようと派閥も形成された。この雰囲気に耐えられず、年度の途中で辞めてしまう教員を含め、毎年10人以上が離職していったという。

※1 文部科学省は2019年から公立中学校教員に支給する部活動手当を3000円から3600円に増額している。

教育活動が疎まれ、「営業活動」を強いられる

それでも、生活の安定が保証されるならまだよかっただろう。しかし、住宅ローンの審査が通らない時期もあったというから驚く。

「マンモス校なのにまさかと言われますが、私学助成金が不交付になりそうだったことがあるんです。校内で学校の倒産が囁かれ始めた頃、住宅ローンを組もうとしていた先生は審査に通りませんでした。やはり金融機関はそういった情報収集能力が高いんだなと変に感心しましたね」

ちなみに、不交付の理由は学校事業の停滞ではない。経営の多角化を図るなかで発生したトラブルが原因だというから、教員側はたまったものではないだろう。

「だから、学校というよりも『企業』ですよ。教えることよりも、儲けることが大切なんです。特徴的なのは、営業活動をさせられることです。『この地区から入ってくる生徒が減ったから、小中学校に行って募集活動をしてこい』と“上司”の先生に言われて、あちこち走り回る。公立学校の先生方は、いくら雑務が大変でも営業活動まではしませんよね。私立の中には、私の勤務校のように、公立同様の雑務をこなしながら営業もしなくてはならない学校もあるんです」

営業活動自体は忌避するものではないが、教員本来の仕事である「教える」ことがおろそかになってしまうと江藤さんは訴える。

「勤務校では、補習も禁じられました。生徒に『わからないから教えてください』と聞かれたら教えるのが教員として当然の姿勢だと思いますが、『補習は1講座いくらとお金をもらってやっているのだから、勝手にタダで教えるな』というのです。追加教材を作成して印刷したら『紙の無駄だ』と怒られ、教員がセミナーや研究会に出席するのも疎まれました」

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