山梨県の「25人学級」、年間9億円の予算・教員の確保に奔走の本気 学級編制標準35人に引き下げを大幅に下回る理由

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問題は、応募者が増えるのか、ということだ。初めて東京都内に採用検査会場を設けて県外在住者が受験しやすくしたり、一次検査の一般・教職教養検査を従来の記述式からマークシート方式にして負担を軽減するなど、山梨県としても策を講じようとしている。25人学級が教員の負担を減らすとなれば、それも応募者を増やす要因になる可能性もある。ただし、採用を増やせるかどうかは、ふたを開けてみなくてはわからない。

全国的な25人学級は、やはり国が動く必要がある

山梨県の例を聞けば、「山梨県ができるのだからほかの自治体でもやれるだろう」という意見が出てきそうだ。

前屋毅(まえや・つよし)
フリージャーナリスト
1954年、鹿児島県生まれ。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。著書に『学校が学習塾にのみこまれる日』(朝日新聞社)、『ほんとうの教育をとりもどす 生きる力をはぐくむ授業への挑戦』(共栄書房)、『ブラック化する学校 少子化なのに、なぜ先生は忙しくなったのか?』(青春出版社)、『教師をやめる 14人の語りから見える学校のリアル』(学事出版)など
(写真:前屋氏提供)

しかし、そう単純ではない。電気事業会計という財源があり、それを教育に引っ張ってくる知事のリーダーシップが山梨県にはある。ほかの自治体に同じことを求めるのは、そう簡単ではないだろう。

山梨県では年間9億円の予算を必要としているが、山梨県より多くの学校が制度を利用することになる自治体ならば、相応の財源を用意しなければならず、それを負担できる自治体は多くないはずだ。

しかし山梨県の25人学級は、子どもたち一人ひとりに教員が行き届いた指導ができ、声をかけることができる制度だ。それが、子どもたちの自己肯定感を高めることにつながる可能性がある。1学級当たりの子どもの人数が少なくなれば、それだけ教員の負担も軽くなることにもつながる。働き方のブラック化が教員志望者を減らしているといわれる中、教員志望者を増やすことにもなるだろう。教員不足への対応策でもあるはずだ。

教員不足への対応はさることながら、こうしたメリットの多い25人学級も自治体任せにすることなく、国が率先して取り組むべきテーマの1つといえるのではないだろうか。

(注記のない写真:TABAKO / PIXTA)

前屋 毅 フリージャーナリスト

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まえや つよし / Tsuyoshi Maeya

1954年、鹿児島県生まれ。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。著書に『学校が合わない子どもたち』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』(朝日新聞社)、『ほんとうの教育をとりもどす 生きる力をはぐくむ授業への挑戦』(共栄書房)、『ブラック化する学校 少子化なのに、なぜ先生は忙しくなったのか?』(青春出版社)、『教師をやめる 14人の語りから見える学校のリアル』(学事出版)など。

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