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世界的に規制強化、「プラゴミ大国」日本の舵取り 条約交渉の政府責任者に、日本の戦略を聞く

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2022年3月のケニア・ナイロビで開催された国連環境総会。プラスチック汚染根絶を目的とした条約の制定で合意した(写真:fotoco)
プラスチックゴミが引き起こす環境汚染が深刻化している。レジ袋やPETボトル、漁網など膨大な量のプラスチックゴミが世界中の海岸に散乱している。紫外線で分解されて微細化したマイクロプラスチックにはPCB(ポリ塩化ビフェニル)などの有害物質が付着。人体に取り込まれることによる健康への悪影響が報告されている。
現状を放置した場合、2050年には海に漂うプラスチックゴミの重量が魚の重量を上回るという衝撃的な試算結果もある。
2022年2月から3月にかけて開催された国連環境総会では、プラスチック汚染根絶を目的とした法的拘束力のある国際条約を制定することで参加国が合意。その策定作業を進め、2024年末までに完了を目指す方針が決まった。今年5月29日〜6月2日には、フランス・パリで条約制定のための政府間交渉の第2回会合が開催される。
日本は1人当たりプラスチック容器包装ゴミの排出量で、アメリカに次ぐ世界第2位。プラスチックゴミの輸出量でも世界トップクラスだ。プラスチックゴミ大国の日本は条約制定に向けてどのような姿勢で臨むのか。日本政府の代表団を率いる環境省の小野洋・地球環境審議官に、条約制定に向けての日本の役割と問題認識について聞いた。


――プラスチックゴミによる環境汚染の現状についてご説明ください。

環境汚染は、地球温暖化、生物多様性の危機と並ぶ環境分野における3大危機の一つだ。環境汚染のうちで「プラスチック汚染」は非常に大きなポジションを占めている。海岸へのプラスチックゴミの漂着や、クジラや魚が誤って食べてしまう問題、さらには未解明な部分が多いものの、人体への悪影響も心配されている。

そうした中で、汚染を根絶するための法的拘束力を持った条約を制定すべきだという機運がここ数年の間に急速に高まってきた。昨年3月の国連環境総会で、2024年末までに条約の制定のための準備作業を完了するという目標が決まったことは、プラスチック汚染問題への対応が一刻の猶予もない緊急課題であることを物語っている。

多くの国の参加と野心的な目標が重要

――5月29日から始まる今回の会合で目指すべきことは。

昨年11月のウルグアイでの第1回会合がキックオフミーティングだったのに対して、今回のフランスでの会合では条約制定に向けて具体的な中身の議論に入る。年初から各国は意見書を提出しており、それを基に国連環境計画の事務局が「オプションペーパー」という名称で各国から出された意見書を取りまとめた書類を発表している。

今回の会合ではそのオプションペーパーを基に、今後制定する条約にどういった要素を盛り込むかについての意見をできるだけ集約することになる。今回の交渉で議論が煮詰まれば、次回の第3回会合では条約のための「ゼロドラフト」(たたき台)を議論する段階に入る。

――日本政府代表団のリーダーとして、条約のあるべき姿をどのように考えていますか。

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