パパ先生なら知っておくべき「男性育休・時短勤務」制度取得の裏側 「時間がなくても幸せ」経験者が断言する理由は
反対に、制度取得時にストレスを感じたことがあると話すのは、山形県の中学校で数学を担当している佐賀井隼人氏だ。3歳の娘と0歳の息子を持ち、教員のキャリアは8年目に突入。妻も同じく正規の中学校教員で、現在育休中だという。自身は、昨年12月の第2子誕生の1週間後から今年3月まで「育児時間」という制度を取得した。

山形県鶴岡市出身。中学校教員8年目。教科は数学。現在は娘と息子の2人の子育てを妻と共にしながら、仕事や勉強に力を入れている。『先生がパパ先生になったら読む本』(学事出版)の著者の一人
(写真は本人提供)
「朝の30分間、放課後の45分間に分けて育児時間を取っていました。朝は8時15分ごろ学校に行き、16時5分の帰りの会が終わると保育園へ上の子を迎えに行くのが当時のルーチンでした」
佐賀井氏は育児時間の取得に際し、とある教員から胸に刺さる言葉をかけられたそうだ。
「『制度があるとはいえ、朝は担任が教室にいて、子どもたちを温かく迎えるべきだ』と言われたのです。私が学校に着く朝8時15分ごろには、すでに生徒は登校し始めています。悔しい気持ちになりましたが、制度への理解や、制度が取りやすい環境が徐々に広がってほしい。また、制度に対応した教育課程をつくるために、根本からルールを変える必要があるとも感じています」
とはいえ森氏・佐賀井氏とも、育休取得を諦めるほどの大きな障壁はなかったという。佐賀井氏は「管理職の方から丁寧に制度の説明を受け、育児時間の取得には非常によく対応していただいた。感謝しかありません」と振り返る。それとともに「取得を希望する場合、学年主任や管理職の教員へ早めに意思を伝えることが重要」と強調する。教員同士の連携が欠かせない学校では、上司だけでなく、同僚にもあらかじめ告知しておくこともポイントだ。
制度活用の選択に“パパ先生としての生き方”が反映される
これからパパ先生になる教員や、制度の活用を検討しているパパ先生に知っておいてほしいことについて、森氏は次のように語る。
制度の種類
「パパ先生が取得できる制度の種類について、まずは情報収集をしてほしいですね。所属団体のホームページや福利のしおりにも記載があります。ママ先生や学校の事務職員に聞くのもお勧めです。子どもがいてもフルタイムで働く教員もいますし、家庭の事情や価値観は人それぞれ。制度を取得するのかしないのか、取得するならどの制度を選択するのか。自身のよりよい生き方を目指して、制度を念入りに調べ納得したうえで、自分に合った判断をするといいでしょう」
佐賀井氏も「最初は知識が浅かったので、制度について勉強しました。育児部分休業は給料に反映される一方、育児時間は反映されないなど、制度ごとにルールが異なります。とくに金銭面は押さえておくべきだと思います」と話す。
金銭面に関することで、森氏はこのような経験をしたことがある。「実は昨年育休を取った際に、自治体の昇給日である1月1日をまたいだのですが、その場合は特別昇給の対象にならないことを後で知りました。大変、残念な思いをしました」