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放置された米兵被曝「トモダチ作戦」の隠れた実態 20人が死亡、がんなどの発症者は数百人に上る

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原発事故のさなかに被災者の救援活動に従事した米軍兵士たち。知られざる健康被害の実態と、小泉元首相らによる支援活動の一部始終。

被災地の上空を飛行するヘリコプター内からの様子
トモダチ作戦で被災地に物資を運ぶヘリコプター(写真:U.S. Navy / アフロ)
東日本大震災で被災した住民の救援活動「トモダチ作戦」に従事した米軍の元兵士たちの間で、東京電力福島第一原子力発電所事故の放射線被曝による健康被害を訴えるケースが相次いでいる。白血病や甲状腺、消化器系のがんなどを発症した現役および元兵士・軍属は数百人に上るとみられ、これまでに20人の死亡が判明している。
日本に貢献してくれた元兵士たちを助けようと、小泉純一郎元首相らが発起人となって「トモダチ作戦被害者支援基金」(通称、「小泉基金」)を立ち上げたのは2016年7月。翌2017年3月末までに約3億円の寄付金を集め、約350人の元兵士たちに医療費名目の一時金を支給してきた。
同基金は昨年7月、「一定の役割を果たした」として、残余財産を米国赤十字社が引き継ぎ、活動を事実上終えた。基金設立で中心的な役割を担った日系米国人ジャーナリストのエィミ・ツジモト氏に、元兵士たちの苦難や「小泉基金」が果たしてきた役割についてインタビュー取材をした。

──「小泉基金」設立の経緯は。

知人を通じて知り合った小泉元首相に、一度米国を訪れて元兵士たちの窮状を知ってほしいと私が要請したことがそもそものきっかけだった。小泉氏は二つ返事で了承し、2016年5月に自身で米カリフォルニア州サンディエゴを訪れたうえで、全米から駆けつけた12人の元兵士たちと面会した。

小泉氏は「日本を助けてくれた元兵士たちがたいへんな目に遭っている。自分にできることはないか」と考え、救援基金の創設を呼びかけた。

小泉氏のほかに細川護煕元首相、大野剛義元さくら総合研究所社長、吉原毅・城南信用金庫相談役(当時)の計4名が発起人となり基金を設立。城南信金グループの城南総合研究所が事務局となり、私も基金の運営に関与してきた。

動画記録された異常事態

──どのような経緯で、元兵士たちの窮状を知ったのですか。

私の元に、トモダチ作戦での従軍中に米海軍の原子力空母ロナルド・レーガンの艦内で数人の兵士が撮影した携帯電話の動画が、知人を通じて届けられた。撮影されたのは2011年3月13日。信じられないような光景を目にした。

当時、レーガンが活動していた日本の東北沖には、水素爆発を起こした福島第一原発からの放射性物質の雲(プルーム)が漂っていた。艦内へのゲートでは放射線を感知するガイガーカウンターが鳴り響き、ある兵士が「俺たちは核のホロコーストの中にいる」と叫ぶ映像に身震いした。

わずか数十秒の動画だったが、パニックの状況を映し出した映像は生々しく、後に私が日本のテレビ局に提供してその内容が放映された。

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