商工中金の「不完全民営化」で銀行業界に募る不安 政府保有株売却方針も、官の色合いは消えず
政府は2025年にも商工中金の保有株をすべて売却する見通しとなった。しかし同業からは、玉虫色の「民営化」に警戒や不満の声が上がっている。
およそ20年越しに決まったのは「不完全民営化」だった。
3月10日、経済産業省は商工組合中央金庫(商工中金)法の改正案を国会に提出した。今春にも可決される公算で、同案では政府が保有する商工中金株を2025年にもすべて売却すると明記した。
商工中金は中小企業向け融資を主力とする政府系金融機関だ。国が46%の株式を保有するが、2006年に成立した行政改革推進法では全株を処分する方針を定め、民営化に向けた検討が進められてきた。
だが、リーマン・ショックや東日本大震災によって民営化は2度延期に。極めつきは2016年に発覚した大規模な不正融資で、民営化そのものに疑問符が付く事態に発展した。その後、経産省の検討会でガバナンスの再建が認められ、ようやくここに来て民営化の布石が打たれた格好だ。
地銀や信金の間で広がる警戒ムード
20年近くの議論を経てこぎ着けた民営化だが、当の銀行業界からは歓迎する声が聞こえてこない。
「民営化と言えば聞こえはいいが、実態は『官』と『民』の良いとこ取り。不完全民営化だ」。西日本の地方銀行幹部はそう切り捨てる。株式売却によって国の管理下から外れるように映るが、政府系金融機関としての特徴は残されたままだからだ。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
無料会員登録はこちら
ログインはこちら