それでは斎藤幸平氏(東京大学准教授)が提唱する脱成長コミュニズム(共産主義)がどのようなものであるかについてみてみよう。
ただし、とても残念なことに、マルクスは「脱成長コミュニズム」論を、まとまった形で展開していません。その限りで、21世紀に生きる私たちはマルクスとともに考えつつ、しかし同時にマルクスを超えて、新しい社会のビジョンを作り出す必要があります。(この点については、私の『人新世の「資本論」』も是非あわせて読んでみてください。)。(斎藤幸平『ゼロからの「資本論」』NHK出版新書、2023年、197ページ)
と斎藤氏は強調する。
実は現実に存在した社会主義(ソ連型社会主義=スターリン主義)も、マルクスを超えてつくられた。マルクスが考えたのとは異質の、鉄の規律によって結び付いた陰謀団型で少数者のボリシェヴィキ(ソ連共産党)が武装蜂起によって権力を奪取した。そしてプロレタリアート独裁の名の下で暴力を背景にして権力を維持した。
個人的所有の再建
斎藤氏はマルクスの『資本論』に立ち返ってコミュニズム像を確定しようとする。
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