さいたま市「1人1台端末活用の不登校支援」開始、試行錯誤で見えてきたこと 「Growth」が大切にする「子どもたちのペース」

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さまざまな事情で学校に行くことができない子どもたちのために、不登校特例校や校内フリースクールなど、新しい学びの場をつくる取り組みが近年増えている。そんな中、埼玉県さいたま市では、2022年4月より「不登校等児童生徒支援センター『Growth(グロウス)』」が発足。1人1台のタブレット端末を活用したオンライン授業をメインに、不登校児童生徒に対する新たな支援が始まっている。

学校でも家庭でもない「安心して学べる第三の場」を

埼玉県さいたま市は、これまで学校内にはスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー、さわやか相談員を配置・派遣し、学校外では市内の6カ所に教育相談室・教育支援センターを設け、学校生活に不安や悩みを抱える子どもたちの相談に対応してきた。

しかし、長期欠席者は増加傾向にあり、2020年度は小・中・高等・中等教育学校を合わせて2451名、そのうち不登校児童生徒数は1401名に上った。不登校の理由としては、無気力・不安、生活リズムの乱れなどが多いという。

「不登校児童生徒のうち支援につながっていない児童生徒が462名いました。本市教育委員会では、GIGAスクール構想によって1人1台端末が配備されたこともあり、何とかオンラインを活用してさらなる支援ができないかと考えました」と、同市教育委員会 学校教育部 総合教育相談室 不登校等児童生徒支援係 主任指導主事 兼 係長の舩水光加氏は話す。

そこで北九州市など先行自治体の事例も参考にしつつ、半年間検討を重ねて開設したのが、不登校等児童生徒支援センター「Growth」だ。舩水氏を含む同市教育委員会の指導主事4名が、「オンライン学習支援」「オンラインとリアル、両方のプログラム提供」「保護者の教育相談、サポート」を3本柱として支援を展開している。

参加条件は原則30日以上通学できておらず、主にオンライン学習を希望する児童生徒だが、30日に満たない場合であっても希望者は基本的に受け入れており、人数の上限もとくに設けていない。毎月20〜25日に申し込みを行うと、翌月からGrowthに参加することができる。22年4月に募集をスタートしてから毎月参加者は増加しており、9月6日現在で117名(小学生43名、中学生74名)が利用している。

メインの支援となるオンライン授業はMicrosoft Teamsを活用し、さいたま市職員研修センターから毎週月〜金曜日に配信を行っている。オンライン授業に参加すると、指導要録上の出席扱いになるよう、在籍している学校に情報を届けている。

舩水氏は「学校でも家庭でもない、安心して学べる第三の居場所になればと。参加することで学ぶ喜びや人とのつながりを感じ、将来的に子どもたちが自立していくことを目指しています」と話す。

チャットでコミュニケーションを取りながら授業を展開

では、実際にどのような活動が行われているのか。

毎日の活動は、学年別ではなく小学部と中学部・中等部に分けて実施。小学部は1名、中学部・中等部は2名の指導主事が、担任のような形で指導に当たっている。

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