さいたま市「1人1台端末活用の不登校支援」開始、試行錯誤で見えてきたこと 「Growth」が大切にする「子どもたちのペース」

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「子どもたちのペースに合わせること」と「信頼関係」が大切

順調に見えるGrowthだが、児童生徒との信頼関係を築くまでには、試行錯誤があった。

「子どもたちが勉強や進路の相談をしたいと思う相手は、信頼関係が出来上がっている人であることが前提。私たちにも最初から話をしてくれたわけではありませんでした」と舩水氏は明かす。

4月にスタートしたばかりの頃のホームルームは、担当職員たちだけで「今日は暑いですね」などと雑談を繰り広げる形となり、「はたしてこれでよいのだろうか」と不安になったこともあるという。しかし、自分たちのことを知ってもらい、楽しそうな職員たちの雰囲気を伝えることで、児童生徒たちが心を開いてくれればと思った。

すると、しだいに「おはよう」などチャットへのコメントが増えていき、クイズやゲームを行えば応えてくれるように。ただし、「あくまで子どものペースや思いに合わせることを大切に、私たちがやりたいことを押し付けないようにしています」と、山田氏は言う。中学部・中等部の英語を担当する指導主事の荒木田悠氏も、「焦らなくていいし、間違えても大丈夫と伝えるようにしており、私たちも『待つ』ことを大事にしています」と話す。

夏の面談では、児童生徒や保護者から、Growthに参加したことで「自信がついた」「楽しかった」「元気をもらった」「生活リズムが整った」という声が多く寄せられた。全体的に人とのつながりを求めている子が多い印象で、中には「2学期は積極的にみんなと関わりたい」という子もいたという。

今後は、保護者向けに講演会や座談会を含む子育て学習会を実施するなど、保護者の不安に寄り添うサポートにも力を入れていく。

しかし、課題もまだまだある。今後は児童生徒の興味・関心に応じて学習用ソフト「ミライシード」を活用するなど、個別学習の充実を図っていく。また、Growthとしてはオンラインの中だけでコミュニケーションを完結させず外での経験を積んでもらいたいという思いがある。実際、Growthに参加したことをきっかけに「学校行事に参加できた」という子どももいるが、「今後は教育支援センターとも連携して、リアルな場での支援につなげられるようにしたい」と舩水氏は語る。

このようなオンラインを活用した不登校児童生徒への支援は全国で徐々に増えており、自治体によっては仮想空間を生かした試みも始まっている。全国的に不登校児童生徒数が増える中、1人1台のタブレット端末の活用を含めて学びの機会をいかに保障していくのか。今、各自治体の姿勢が問われている。

(文:酒井明子、写真:さいたま市教育委員会総合教育相談室提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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