現実的な戦略もなく脱炭素や格差なき未来を訴えてきた西側の政治家、経営者、エコノミストは、ウクライナに対するロシアの残忍な侵攻を自らへの警告と受け取るべきだ。現下の危機への短期的な対応がどのようなものになろうとも、欧米の長期的な財政戦略は、エネルギー安全保障と軍事的な抑止力を、環境の持続可能性や社会保障と同列に位置づけるものでなくてはならない。
1991年にソ連が崩壊した理由としては、新生ロシアの指導者層が次の事実に気づいた点が小さくなかった。ソ連の共産主義軍産複合体では、西側の圧倒的な経済力と技術力に太刀打ちできない、という事実だ。ロシア経済の規模は現在、米国と欧州連合(EU)を足し合わせたものの20分の1にも満たず、防衛費でロシアを圧倒する戦略は当時よりも遂行が容易になっている。にもかかわらず西側社会には、国防費が「必須の支出」となる場面があることを認めようとしない空気が強い。
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