人文科学は不遇の時代を迎えている。今では多くの一般教養科目が、かび臭くて役に立たないものと見なされるようになった。人文科学の学徒である私は、人文科学は不透明な未来に対処する知恵を学生に伝える重要な学問だと考えている。過去5年間を振り返ればわかるように、最も事情に通じた専門家の予測でさえ、いとも簡単に外れることがある。人類の多様な経験を扱う人文科学は、思い上がった予測から身を守る最良の盾となってくれるはずだ。
だが人文科学が実際に役立つことを示すには、以上のような論点を繰り返しているだけではダメだろう。政治の支援を取り付けるとなれば、なおさらだ。オーストラリア政府は人文系の学部の学費を大幅に引き上げようとしている。「就職に役立つ」理数系の学問に学生を誘導しようとしているわけだ。この政策を打ち出したダン・テハン教育相(当時)によれば、職にあぶれかねない人文系の教育から学生を救うためだという。
喫煙の害について語る保健当局と同じような口調で教育相が科目選択に口出しするのは問題だが、それはさておき、人文科学をもっと新鮮で「就職に役立つ」学問に仕立て直すにはどうすればよいのか。一案は、伝統的な期末リポートを廃止し、より効果的な説得やコミュニケーションを重視したものに履修内容を変えることだろう。
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