団交、ストで労組員を逮捕 労働分野で進む解釈改憲 ジャーナリスト、和光大学名誉教授 竹信三恵子氏に聞く

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たけのぶ・みえこ 1976年、朝日新聞社入社。東京本社経済部、編集委員兼論説委員(労働担当)などを経て2011年から和光大学現代人間学部教授。『ルポ 雇用劣化不況』で日本労働ペンクラブ賞受賞。ほかに『ミボージン日記』『ルポ 賃金差別』『家事労働ハラスメント』など。(撮影:尾形文繁)
賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国
賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国(竹信三恵子 著/旬報社/1650円/260ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
団体交渉やストライキを理由に、労組の組合員など延べ89人が逮捕、うち71人が起訴され有罪判決も出た。委員長らは複数の警察で逮捕、勾留、起訴となり、その勾留期間が連続600日を超えた者もいる。独裁的な新興国の話ではない。2018年以降、全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(以下、関生支部)に起きたことである。

待っていても賃上げはない 戦う労組を狙い撃ち?

──実績を上げている労組です。

中小が多い生コン業界は、原料調達価格、販売価格とも交渉力が弱く、ミキサー車運転手にシワ寄せが行く構造です。待遇改善へ企業内で労使交渉をしても、経営側は体力が弱く倒産しやすいので企業内組合では対応できません。業界横断的に組織される産業別労働組合が現実的です。

関生支部は、経営者に対し独禁法適用除外の協同組合の仕組みを生かして、大阪広域協組などの設立を促しました。協組ができて原料メーカー、ゼネコンに対する価格交渉力が強化され、結果として賃上げなど待遇改善を勝ち取りました。運転手にシングルマザーが多いのは、年収500万〜600万円、急な残業は断れるなど1人でも子育てできる賃金、時間が確保できていたからです。

──ウィンウィンの関係だったのに、潮目が変わりました。

17年の賃上げをめぐるゼネストに対し、広域協組は裁判所にスト中止の仮処分を申請します。理由は、威力業務妨害で犯罪行為。ストは労働法で認められた団体行動権で犯罪ではないのですが、さらに半年後、経営側は関生支部の委員長らを威力業務妨害で大阪府警に刑事告訴して受理され、大量逮捕が行われました。

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