パナソニック「増益」を喜べない新体制の不安 剛腕ぶりが期待された新社長の姿勢に変化も
6月に就任した楠見社長の最近の経営姿勢に変化。かつての「冷徹さ」が影を潜めている。
事実上の減益決算だった。
パナソニックは10月28日、2021年7~9月期の決算を発表した。売上高と営業利益は、前年同期比各4%増の1兆7412億円と968億円。増益の牽引役は、9月に買収が完了したアメリカのソフトウェア企業、ブルーヨンダー株の再評価益583億円だ。売上高から原価と販管費を引いた調整後営業利益は前年同期比15%減の803億円だった。
パナソニックは同日、2022年3月期の通期業績予想を上方修正した。ただ、株式の再評価益があるにもかかわらず、営業利益は従来予想から400億円増にとどまる。車載電池や電子部品事業など一部に堅調な事業はあるが、収益力の回復が十分でないことが示されており、これも手放しには喜べない。
収益が苦戦している原因は、原材料や輸送にかかるコストの上昇だ。梅田博和CFO(最高財務責任者)は「コスト増は第1四半期(4~6月期)よりも第2四半期(7~9月期)のほうが大きい」と指摘。年間で1000億円の減益要因になるという。
車載機器は赤字に転落
世界的な半導体不足の影響もある。パナソニックは今回の決算から新セグメントでの業績を開示した。その中で車載機器を手がけるオートモーティブ事業は自動車メーカーの減産が直撃し、7~9月期の調整後営業損益が46億円の赤字に転落した。
通期では同事業の黒字を見込むが、自動車メーカーが挽回生産する計画が前提だ。梅田CFOは「市場在庫は低いレベルにある。作れば必ず車を買って貰える環境だ」と自信をのぞかせる。それでも半導体不足で各社が相次いで当初計画からの減産を発表している現状では、希望的観測の面が強い。
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