高度経済成長期の「昭和モデル」から抜け出せない日本。今後の再生のために必要な政策を探る。

河野氏は「非正規社員のセーフティーネット拡充」を提案(撮影:尾形文繁)
グローバル化とIT化の進展で、先進各国では中間層が消滅し、経済格差が広がっている。日本では特に潜在成長率の低迷が顕著で賃金も一段と低く、消費が増えない。
では、日本においてどのような改革が必要か。マクロ経済、経済政策論を専門とするBNPパリバ証券経済調査本部長の河野龍太郎氏に聞いた。
――世界的に中間層の消滅による格差拡大が顕著になっています。日本でも同様のことが起こっているのでしょうか。
先進国では1980年代まで、高いスキルを持っていない人でも大企業の工場労働や補助的な事務職で比較的高い賃金を安定的に得られた。ところが1990年代からグローバリゼーションやICT(情報通信)革命が起きたことで、中レベルのスキルを持つ人の雇用が生産拠点の海外移転や自動化で代替された。これが、欧米で中間層が瓦解した理由だ。
日本でも、生産拠点の海外移転が進んだが、それを穴埋めする収益性の高い投資機会が生まれなかった。中間的な賃金が支払われていた製造現場での良好な仕事に代わって現れたのは、教育訓練の機会が乏しくセーフティネットに欠ける非正規雇用だった。非正規の増大が格差拡大につながった。
固定化した教育格差が問題
グローバリゼーションやICT革命は、高い教育を受け高いスキルを持つ人に恩恵をもたらす。富裕層は高い教育のお陰で自らが高所得を得ていると認識しているので、自分の子どもにも高い教育を受けさせたいと考える。
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