高度経済成長期の「昭和モデル」から抜け出せない日本。今後の再生のために必要な政策を探る。
日本経済が長期的に活力を維持・向上させていくためには、人口減に伴う人手不足を補うための外国人労働力の活用だけでなく、優秀な研究者やIT技術者、起業家といった「高度外国人材」の確保が重要となる。政府も成長戦略の1つに掲げ、高度人材ポイント制導入などの対策を講じてきた。
だが、日本の高度外国人材を吸引する力は依然弱く、さまざまな課題が指摘される。コロナ禍の収束後には世界中で人材獲得競争が激化すると予想され、今のままでは外国人材のほうから見切りを付けられてしまいかねない。「頭脳のジャパンパッシング」だ。
約30年にわたり日本に住み、2020年には永住権も取得した著名エコノミストのロバート・フェルドマン氏。現在、モルガン・スタンレーMUFG証券のシニアアドバイザーを務め、東京理科大学の大学院で教鞭を執る。
今もなお積極的にニッポン再生の提言を行う同氏に、高度外国人材を呼び込むことの重要性や日本が抱える課題・改善策について聞いた。
――日本に高度外国人材を呼び寄せることの重要性をどう考えますか。
外国人材を活用することは組織の多様性を生む。ソーシャル物理学の専門家によれば、よいチームワークの条件は、よく話すこと、均等に話すこと、外部の情報をたくさん持ってくることの3つ。3つめは、すなわちダイバーシティ(多様性)だ。
日本はムラ社会の面があるが、外部の人材が異なる経験や観点から参画することがイノベーション(技術革新)につながる。世界のトップ30社のうち半分の創業者は一世か二世の移民だ。日本ではこれから生産年齢人口の減少が加速していく。その中で経済成長を保つには生産性向上と、そのためのイノベーションが欠かせない。
――高度外国人材の中でも、とくにどんな人材の獲得が重要になりますか。
私は東京理科大の大学院の技術経営(MOT)専攻で教えているが、イノベーションを普及させるには高い技術知識と経営能力を兼ね備えた技術経営が求められる。そして、AI(人工知能)などの技術を使いこなすためのSTEM(科学・技術・工学・数学)が重要になる。
驚くことに、日本ではSTEM分野の大学生は、数だけでなく割合も低下している。「学び直し」を含めた教育改革が必要である一方、海外からSTEMに優れた人材を呼び寄せることも必要だ。そうした人材はロシア、中国、フィリピン、インド、東欧に多い。米国や西欧、豪州などにも優秀な人は多いが、あまり日本に行こうとは考えていない。
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