――通常の経済学では、資産は生産をするために使われるものとして扱われてきました。そのため、単に「資産価格は需給で決まる」となって、いわゆる「バブル」や「デフレ」はうまく説明できなかった。しかし、清滝さんは、資産における担保の側面などを入れたモデルを構築することで、標準的な経済学を修正したわけですね。
宇沢弘文先生が翻訳したジョーン・ロビンソン(正統的なケインズ後継者とされる元ケンブリッジ大学教授)の『異端の経済学』には、「ケインズ革命の核心は、人間の生活は時間を通じて行われるということをはっきり認識したことであった」と書かれている。
彼女の言葉は深みがあり、「変えることのできない過去とまだ未知の将来の間に、たえず動きつつある瞬間において人間は生活しているのだ」と日本語版の序文に書いている。(清滝=モーアモデルをつくった)ジョン・モーアと一緒に仕事をしているときにも、その言葉が私の頭にはあった。
――ただ、不確実性を重視し、正統的なケインズ後継者と言われるポストケインジアンなどは、学界で異端扱いされて、主流派経済学者との議論はかみ合っていません。アメリカの主流派の中でもまれてきた清滝さんも、標準的学説を修正するうえで苦労されたのではないでしょうか。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
東洋経済ID 会員特典
東洋経済IDにご登録いただくと、無料会員限定記事を閲覧できるほか、記事のブックマークや著者フォロー機能、キャンペーン応募などの会員限定機能や特典をご利用いただけます。
東洋経済IDについての詳細はこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら