消費低迷が停滞の根因 カギは被用者社会保険料か
評者/BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
2000年代初頭、不良債権問題こそが日本の失われた10年の原因とされた。しかし、それが解決された00年代後半以降も低成長は続いている。本書は、計量経済分析の泰斗が、30年に及ぶ長期停滞の原因を解明した読み応えのある1冊だ。
確かに、不良債権問題が終息すると企業の収益率は改善した。しかし、その後も企業の保守的行動は変わらず、正規雇用を非正規雇用で代替するなど、コスト削減で利益を捻出するリストラが常態化し、低水準の設備投資が続いた。計量分析から、企業の投資行動を左右するのは、長期の経済成長見通しであることを改めて確認する。
筋肉質となり、生産性も向上した企業がなぜ悲観的な見通しを続けるのか。問題は供給サイドではなく、需要サイド、とりわけ消費低迷にあることを統計的に見出す。近年の法人税減税の効果が乏しかったのが納得できる。
それではなぜ消費低迷が続くのか。個票データの分析から、公的年金制度の先行きに懸念を持つ家計が、消費を抑制していることを突き止める。国民の安心のために行ったはずの制度改革だったが、年金保険料が増えると、人々はむしろ貯蓄を増やし消費を抑制した。ただし、夫婦ともに正規雇用の場合、過大な貯蓄は行われていない。
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