ANAが希望退職実施へ 雇用維持貫くJALとの差

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賃金カットで年収は3割減に。両社で対応が分かれた2つの要因とは。

ANAがハワイ線の専用機材として2019年に導入した、世界最大の旅客機・欧エアバスA380。出入国制限の緩和が進まない中で、戦略が裏目に出た

とうとう雇用維持の限界がきた。ANAホールディングス(以下、ANA)傘下の全日本空輸は10月7日、退職金の割り増しによる希望退職の募集を労働組合に打診した。2013年度には同様の条件で希望退職を募り、40人が応じたが、今回の募集人員の規模に定めはない。

7月末の決算会見でANAの福澤一郎常務は「雇用を守りながらこの危機を乗り越えるという基本方針は変わっていない」と語っていた。だが、本格的な航空需要の回復期が見通せず、ついに方針を転換した。

今回、希望退職のほかに、今冬の一時金をゼロとすることや、一般社員の月給の減額も提案。夏季一時金が従来比50%減となったこともあり、社員の年収は前年比3割減となる見込みだ。

全日本空輸は20年3月末時点で1万4830人の従業員を抱える。ただ、新型コロナウイルスの影響で4~8月の旅客数は国際線で前年同期比96.3%減、国内線も同82.2%減と大きく低迷している。

ANAの資金総額は現預金と有価証券、融資枠を合わせて1兆円を超える(20年6月末時点)が、前20年3月期決算を基にすると、固定費だけで月に約800億円の現金が流出する。今第1四半期(20年4~6月期)で1088億円の純損失を計上し、純資産9743億円の侵食も進む。

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