「“逆ザヤ構造"を変えなければ将来はない」 インタビュー/三陽商会社長 大江伸治

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これまでの三陽商会の百貨店での売り方について、「バカみたいに大量の在庫を売り場で抱え込んでいた」と振り返った大江社長(撮影:今井康一)

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英国ブランド「バーバリー」とのライセンス契約が2015年に終了して以降、大幅な営業赤字から抜け出せずにいる三陽商会。百貨店を主要販路とし、「名門アパレルの代表格」と言われてきたが、その先行きを不安視する声は少なくない。
経営の抜本的な立て直しに向け、2020年3月に招聘したのが現社長の大江伸治氏だ。アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」を展開するゴールドウインの経営再建に携わった経験を持つ。
コロナ禍で売り上げ減少に歯止めがかからない中、就任早々、大規模な在庫処分や不採算店撤退などの大ナタを振るう。大江氏は三陽商会をどう再建するのか。


──6月に店舗営業が再開した後は50%オフや70%オフなどの大規模なセール販売をしました。前期からの滞留在庫や、コロナによる店舗の臨時休業で膨れ上がった在庫は圧縮できた一方、ブランドイメージが悪化したのでは。

ブランドイメージは相当傷ついたと思うが、現実的には在庫処理を優先せざるをえなかった。悪化したイメージをマジックのように回復する手段もない。古い在庫を処分して新しいものに切り替え、新しい商品は徹底して(定価販売の)率にこだわって丁寧に売る。こういう地道な作業をするしかない。

今後は売り方を変える。これまでのように広く浅くブランドイメージを打ち出すのではなく、「ブランドの顔」になる商材を作る。「このブランドといえばこれだ」という基幹商品や定番商品を作る戦略に切り替えて、品番数は大幅に削減する。

販路は直営店を増やして、ブランドの世界観をより能動的に発信する。ブランドを展開するうえで、直営店の強化がコア戦術となることはゴールドウイン時代に経験済みだ。今期の業績が厳しい中でも、東京・外苑に「ポール・スチュアート」、原宿には「クレストブリッジ」の直営店を出す。よい物件が出てきて確実に利益を出せるメドが立つ立地であれば、投資していきたい。

百貨店の理屈ではもう商売しない

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