終わりを迎えた百貨店との蜜月 オンワードと三陽商会は大量閉店

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「客が集まらないのに、『売り場を貸すから在庫も販売員も過不足なく用意しろ』と百貨店に言われるのはもう限界。経営陣には絶縁宣言をしてもらいたい」

前年比で2ケタ減が続く百貨店店頭の売り上げ数字を前にして、ある老舗アパレルの社員はため息交じりにそう口にする。

百貨店の衣料品販売額が1990年代初頭をピークに落ち込んでいく中で、ワールドなどは早々にショッピングセンター(SC)向けのブランド強化に転じた。一方、百貨店アパレル名門のオンワード樫山や三陽商会は、今なお売上高の過半を百貨店で稼ぎ、その蜜月関係を崩さずにきた。

しかし、百貨店アパレルの大量閉店で、その関係は瓦解しようとしている。

長年にわたる経営不振の末、2020年5月に子会社を通じて民事再生法の適用を申請したレナウン。30年前には国内アパレル企業で売上高首位を誇った百貨店アパレルの名門はスポンサーが見つからず、会社の清算に向けた整理を粛々と進めている。

買い手がつかないブランドは廃止し、9月末に大阪のアパレル企業・小泉グループに切り売りされた高級紳士服「ダーバン」や「アクアスキュータム」も、不採算売り場を大量に閉めた。

オンワード樫山を中核とするオンワードホールディングスは2019年度と2020年度の2年間で、同社店舗の4割強に当たる1400店を撤退する。多くの地方百貨店から「自由区」や「組曲」といった基幹ブランドが姿を消し、紳士服の「23区オム」は今夏でブランド自体を休止した。

三陽商会も2020年度、年間売り上げが2000万円に満たない百貨店売り場を中心に、全社のおよそ15%に相当する約160店を閉める見通し。2016年末に約1350あった同社の店舗は、約4年間で3割強が減ることになる。

百貨店の商慣習はもはや足かせ

「これからは百貨店の御用聞きのような商売はやめる」

三井物産出身で2020年3月から三陽商会の経営に参画した大江伸治社長はそう断言する。百貨店と運命共同体の関係を貫いてきたアパレル企業も、我慢の限界を迎えた。

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