1人10万円の特別定額給付金制度が、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策の一環として実施された。受給権者は「給付対象者の属する世帯の世帯主」で、世帯主の一括申請・口座振り込みが原則だった。緊急性が高く、迅速な家計支援が求められたためだ。
もし個人ごとの申請・受給だったとしたら、現金給付の効果は異なるものになっていたのだろうか。家族全員が同じ選好(好き嫌い)、つまり「同じ給付金の使い道の希望」を持つ場合は、理論上、総額いくら受給したかのみが問題となり、受け取り手が誰であっても家計行動にはいっさい影響しない。この想定は家計単一モデルと呼ばれる。
使途と夫婦間の交渉力
他方、夫と妻が異なる選好を持つ場合は誰が受け取るかが重要になる。この場合、給付金の使途は「夫婦間交渉」により決まるが、補助金は受け取り手側の交渉力を上げる効果を持ち、夫婦の力関係を変化させる可能性があるためだ。
誰を現金給付のターゲットにするべきか。それは、政策の目的次第だ。実は、途上国で実施されている家計支援政策では、世帯主(主に男性)ではなく、妻が受け取り手に指定されることが多い。その背景には、管理できる資源を増やすことによって、女性の家庭内での発言力を増やす狙いがある。
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