市街地まで侵食し始めた開発の波。持続可能性を高めるべく地元の模索が始まった。
「10月の修学旅行生が最後のお客さんです。もう、疲れました」。字山田地区でペンションを経営する男性はどこかふっきれたように話す。10月末でペンションを閉め、倶知安町外へ引っ越すという。
前オーナーから現在のペンションを引き継ぎ1993年に開業。修学旅行生や日本人スキーヤーを相手に切り盛りし、常連客にも恵まれた。ところが、2000年代に入ると外国人が目立つようになった。「にぎわうことは結構だが、開発が進む中で日本人が排除されているように感じた。宿泊価格もどんどん上がり、やり取りも英語が当たり前。ペンション仲間からは『おまえも外国人を相手にしたらどうだ、儲かるぞ』とも言われたが、金儲けに走る気はなかった」。
急激な環境変化に戸惑いつつも、常連客や口コミ客などを相手に地道に経営していた。だが、市街地に住む町民の一言がとどめを刺した。「あなたは『ヤマの人』でしょう」。訪日客の急増で潤った観光業を揶揄する言葉だった。町への愛着を失った男性はペンションの閉店を決断、この10月末に海外投資家へと引き渡した。その向かいに立つ、知人が経営していたペンションも売り出し中だという。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら