AIで雇用喪失は杞憂だが疎外、所得偏在は加速か
評者/BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

[Profile]いなば・しんいちろう/1963年生まれ。一橋大学社会学部卒業。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。岡山大学経済学部助教授などを経て明治学院大学社会学部教授。専門は社会哲学。『銀河帝国は必要か?』『「新自由主義」の妖怪』『ナウシカ解読』など著書多数。
近年、AIが人間の仕事を奪うという懸念が先進国で広がっている。例外は労働力の減少が進む日本だ。AIも外国人労働も大歓迎の雰囲気だが、頭脳労働も代替可能というから、一度じっくり考える必要がある。

本書は、19世紀の産業革命後に誕生したわれわれの労働観を含めて、AIがいかなる変化をもたらすのか、気鋭の社会学者が論じたものだ。ヘーゲルやマルクスなど産業革命期の思想を手掛かりに、大きな見取り図を提示する。
類書と異なるのは、労働疎外の問題を掘り下げている点だ。そもそも労働には、苦役と、創造や生き甲斐という人間固有の輝かしい二面性がある。機械で代替できることは任せ、単調な労働から解放された人間は、創造的な仕事に打ち込めばよいはずだ。
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