静岡大学大学院 教授 稲垣栄洋氏に聞く 『生き物の死にざま』を書いた

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いながき・ひでひろ 1968年生まれ。農学博士。専門は雑草生態学。岡山大学大学院農学研究科修了後、農林水産省に入省。静岡県農林技術研究所上席研究員などを経て、現職。著書に『雑草はなぜそこに生えているのか』『たたかう植物』『身近な雑草の愉快な生きかた』ほか多数。(撮影:吉野純治)

ライオンも最後は食われて死ぬ。自然界に“天寿”は存在しない

29の生き物たちに運命づけられた、それぞれの生と死。そのユニークな生態を紹介しつつ、余韻に満ちたエッセーに仕上げている。予想した以上の奥深さ。出合えたことを幸運に思える本だ。

生き物の死にざま
生き物の死にざま(稲垣栄洋 著/草思社/1400円+税/207ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──蚊(アカイエカ)の物語、切なかったです。

交尾を終えたメスが、幾重もの困難を突破して家に進入し、人間の肌に着地し血を吸い取ることに成功する。あとは屋外へ脱出し産卵という最後の最後、ピシャッとたたかれて死ぬ。1匹の蚊の命を懸けた大冒険は突如幕引き。でもそれは、「ただ、それだけの夕暮れ」。

──そのあっけなさと、生をつなぐための緻密な機能のコントラスト。無常感さえ漂うような。

蚊の口は1本の針のように思われてるけど、実際には6本の針が仕込まれていて、まずギザギザがついた2本の針で人間の肌を切り裂き、別の2本の針で開口部を固定する。さらに1本の針で麻酔成分と血液凝固を防止する唾液を流し込み、もう1本で目当ての血を吸う。いろんな道具を駆使する手術みたいなものです。

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