マイルス・デイヴィス 自分自身をプロデュースする

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(イラスト:谷山彩子)

1959年にリリースされたマイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』は、ジャズ史上最も売れたアルバムで、60年を経た現在でも、いまだに「最も売れているジャズアルバム」です。

本コラムの読者に「聴いたことがない」という人がいらっしゃったとしても、きっとどこかで一度は耳にしたことがある名アルバムですから、もし覚えがないという人がいらしたら、悪いことは言いません、何食わぬ顔をして一度聴いてみることをお勧めします。

このアルバムは、1曲目の「So What」からラストに至るまで、抑制の効いた「クール」なトーンが感じられます。この「クールさ」こそがマイルスの特徴であり、アルバムが大ヒットした理由なのです。

実は、その「クールさ」が、マイルスの弱点から着想を得た産物であった、というのが今回のお話です。なぜ「強み」と「弱み」が表裏一体になっているのか? ということをご説明します。

実はマイルスは、決してトランペットがうまいプレーヤーではなかったのです。どちらかといえば、むしろ下手だった。これは50年代の当時としては決定的なハンディでした。

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