さいとう・まこと●一橋大学大学院経済学研究科教授。専門はマクロ経済学、金融経済学、財政学、金融論。 1960年生まれ。京都大学経済学部卒業。米マサチューセッツ工科大学でPh.D.取得。住友信託銀行調査部、加ブリティッシュ・コロンビア大学経済学部などを経る。
丹念に検証し社会の在り方を問う
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
仮に、地震の発生確率を正確に予測できるのなら、発生確率に損害額を乗じた規模の対策を取ればよい。発生確率が低いのなら、対策費はかなりの確度で無駄になるが、甚大な被害が訪れるとすれば、対策を取る価値があるだろう。ただ、多大な対策費の捻出で、我々は日々の生活水準を切り下げなければならない。より大きな問題は、現実には、地震予知が極めて難しく、費用をかけた対策が効果的かどうかも不確実なことである。
危機の予測だけでなく、危機を回避するための対策についても、科学的根拠が十分でない場合、我々はいかに対応すべきか。本書は、日本を代表するマクロ経済学者が地震予知と災害、原発危機、金融危機、財政危機など大きな不確実性を伴う「危機の領域」について、丹念に検証し、危機に対する社会の在り方を問うたものだ。市場規律の貫徹だけでは解決できない難問を深く掘り下げた好著である。
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