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がんサバイバー 大久保淳一 生存率20%からの帰還 走ることが生きる証し

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がんを克服しNPOを立ち上げた。肺の機能は3割失われたが、マラソンを続けている。患者を励ましながら、走ることをやめない人生。

長身の締まった体躯、さっそうとして精悍(せいかん)な面持ち。市民ランナーとして、いかにも歴戦のつわものといった雰囲気を漂わせている。まもなく54歳を迎えるが、年に3回はフルマラソン(42.195キロメートル)に出場。今も自己記録更新に挑み続ける。

しかし肺の3分の1は機能していない。腹部からは50個近いリンパ節が摘出されている。11年前に骨折した右足首も、リハビリテーションが不十分だったために万全ではない。そして、右側の睾丸(こうがん)も失われている。

がん発病後のマラソンのベストタイムは3時間53分。がん発病前の3時間25分を超えたくて、日々走り込む。皇居周辺は昔からの練習場所だ(撮影:尾形文繁)

大久保淳一(おおくぼ・じゅんいち)は2007年、外資系の証券マンとして公私共に満ち足りていた42歳のとき、精巣がん(ステージ3の重症)を患い、そのがんは全身に転移していた。のみならず、その治療の副作用で間質性肺炎を発症。この病気になると、スポンジのように柔軟だった肺組織が線維化して発泡スチロールのようになり、その部分は酸素を取り込めなくなる。

仕事に復帰するまでの1年半、文字どおり死線をさまよった。生き永らえた命は、がん経験者、そして今なおがんを抱える人たちを支援する社会活動のため自ら設立したNPO法人「5years(ファイブイヤーズ)」にささげている。

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