意気込んでワシントン入りした安倍晋三首相は2月10日、ホワイトハウスでトランプ米大統領とにこやかに握手を交わした。首脳会談では、日米同盟の重要性を確認。安倍氏の目的は一応、果たされた。だが和やかな会談の舞台裏ではアジア・太平洋をめぐる新たなパワーゲームが繰り広げられている。
それを象徴する出来事が、日米首脳会談前日の9日に起きた。トランプ氏と中国の習近平国家主席との電話会談である。米側の発表によると、トランプ氏は台湾が中国に属するという「一つの中国」政策を「尊重する」と初めて言明したという。トランプ氏は大統領選に勝利した直後、外交関係のない台湾の蔡英文総統と電話会談し、「一つの中国」政策についても「なぜ縛られなければならないのか」と発言していた。その路線を修正した格好だ。
中国にとって、「一つの中国」は絶対に譲れない原則だ。最初に相手の嫌がる発言をして、その後に安心させれば、相手からは感謝される。中国に向けたトランプ氏の一連の発言には、そんな計算が込められていたのだろう。中国のテレビ報道によると、習氏は「『一つの中国』は中米関係の政治的な基礎。中国は中米関係の安定的な発展を推進していく」と語り、対米協力姿勢を打ち出したという。トランプ流交渉術で中国は対米融和に動きつつある。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら