中国の膨張戦略に逆風 南シナ海が抱える火種
仲裁裁判所は南シナ海の領有を認めないと判断。中国はどうするのか。
「司法判断なんて、ただの紙くずだ」──。中国の戴秉国・元国務委員は7月5日、米ワシントンDCの講演で、そう述べていた。「司法判断」を「茶番劇」「紙くず」とする表現は軍の高官も用いている。
7月12日、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は、中国が主張する南シナ海の領有権について、全面否定する司法判断を下した。フィリピンの申し立てに対応したものだ。
司法判断は法的な拘束力を持つ。中国が九段線(図表1)内において主張していた、「歴史的権利」についても証拠がないと指摘されたことは、同国にとって受け入れがたい。ほかの東南アジア諸国にも提訴されれば、中国の孤立が鮮明になり、ダメージは計り知れないからだ。
案の定、中国外交部は即座に、「南シナ海の領土主権と海洋権益に関する声明」を発表。当該海域での「2000年以上の活動」を主張し、仲裁裁判所の判断を受け入れないと表明した。
翌13日には、中国国務院が司法判断に反論する「白書」を公表し、領土に対する主権に焦点を当ててきた。国連海洋法条約は海洋における各種ルールを定めたもので、その制約は領土には及ばないと暗に主張した。こうした反応の速さは、周到に準備していたことを示している。
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