筆者は、今年で職業作家になってちょうど10年になる。主要国のインテリジェンス機関の分析官と筆者は親しくしていたが、専門家といわれる条件の一つが、当該分野で10年間の実務経験を積んでいることであった。筆者の場合でも、ロシアを専門とする外交官として、語学力や地域事情に関する知識のみならず、人脈構築能力や、政局を読む勘は、10年を経った頃から飛躍的に伸びた。別の言い方をすると、10年、専門家として実務経験を積んだ人を、どんなに優秀なジェネラリスト(総合職)であっても追い抜くことはできない。
作家の場合も、おのおのの得意分野がある。10年間、特定の分野で読者を維持している作家は強い。裏返して言うと、10年間、継続できるような専門分野を持っていることが職業作家として生き残るための必要条件なのである。
2005年5月に面談したとき、井上ひさし氏は、「作家としての必要条件」という言葉は用いなかった。しかし、筆者への助言の内容は、10年以上生き残ることができる作家になるための必要条件であった。
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