SDRと金を結びつけた 新しい金本位制を提言
評者 東洋英和女学院大学教授 中岡望
本書はさまざまな経済問題を取り扱っている。その一つは国際通貨基金の特別引出権(SDR)と金を結びつけた新しい金本位制の提言である。
著者は歴史的に金本位制度を三つに区分する。第1次世界大戦までの「古典的金本位制」、その後の金本位復帰から大恐慌にいたる「金為替本位制」、第2次世界大戦後の米国を中心とする「金ドル本位制」である。そして、古典的金本位制はうまく機能していたと主張する。
金本位制に対する“三つの神話”を指摘し、それぞれを否定する。すなわち通貨供給を満たすだけの十分な金供給は存在しないという神話、金本位制が大恐慌を引き起こしたという神話、金が市場パニックを引き起こしたという神話である。大恐慌は金本位制ゆえに起こったのではなく、中央銀行の政策の失敗によって起こったとし、「金本位制は過去にうまく機能したし、今日も完全に実現可能である」と主張する。
こうした主張の背景には、基軸通貨としてのドルの信認低下がある。ドルの実質実効レートは過去最低水準にまで低下し、各国は準備資産として金の保有を増やす金争奪戦の動きを示している。また世界の外貨準備に占めるドルの比率は低下している。これらはいずれもドルの信認低下を示している。
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