桐蔭学園中等が授業化、東大推薦合格者も出す「模擬国連」とは? 国際大会受賞の生徒も語る数々の「身に付く力」

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そのおかげか進路を決めやすくなる生徒も多いそうで、例年、部員の半数は「この大学でこれを学びたい」と、総合型選抜で進路が決まっていく。命の意味を自分なりにつかみたいのか、医学部志望の生徒も多く集まる傾向にあるという。

部員は現在19名。週に2回の活動は、大会や他校との合同練習に向けての準備や振り返りなどを中心に行う。22年度は男女共学化初年度に入学した生徒たちが後期課程になるため、初めての女子部員が入部する可能性も。「実際の国連では女性が紛争問題の交渉に関与すると解決しやすいと聞いたことがあります。今までとは違う視点の意見も出るのでは」と橋本教諭は楽しみにしている。

模擬国連は「自分のなりたい姿」になるためのツール

現在、模擬国連部で部長を務めるのは、5年生の田端開さん。オンライン開催となった2021年の国際大会で最優秀賞(事務総長賞)を獲得したエースだ。

模擬国連部部長と生徒会長を務める、5年生の田端開さん。先輩とペアを組み、2020年の全日本高校模擬国連大会で最優秀賞に次ぐ優秀賞、21年の国際大会で最優秀賞を受賞
(撮影:ヒダキトモコ)

最初は先輩に強引に誘われて入部した田端さんだったが、話すことが好きな自分に向いていると気づいた。また、知っている国が増え、世界のさまざまなニュースに関心を持てるようになった。今では世界中に母国がある感覚だという。

模擬国連部では話す力や論理的思考能力、ディスカッションの基礎力が鍛えられるというが、「私自身は、苦手に感じていた『いろいろな角度から物事を見ること』ができるようになりました」と、話す。

それを強く感じたのが、21年の国際大会だ。「突然『インドの毒ガスを積んだ米国の飛行機がパナマで爆発しました。これについて15分で考えを説明しなさい』と想定外のミッションが降ってきましたが、パッと対応できた。多角的な考え方ができるようになったと実感しました」と、田端さんは振り返る。

この対応力に加え、担当国の利益を強く主張する参加者が多い中、日本の和の精神で後ろから支える形でまとめ役を果たせたことが、受賞の要因ではないかと分析する。また、これを機に、将来への思いも深まった。

「国際大会の議論のテーマは、『AIを搭載した戦闘ドローン』だったのですが、関心の高かった『AIと法規制』に関わることだったので、改めてこの領域で社会貢献をしたいと思うようになりました」(田端さん)

橋本教諭に「聞く力」を絶賛されている田端さんだが、話すのがうまい人や考えるのが得意な人など、優れた人がたくさんいることが刺激になっているという。魅力的な人たちに出会えるのも、模擬国連に取り組む利点のようだ。

「私は模擬国連を自分のなりたい姿になるための成長ツールの1つと捉えており、本気でやると得るものが非常に多い活動だと思っています。そんな模擬国連を中等3年生が授業で体験できることは、すごくうらやましいですね」(田端さん)

22年4月から2年目となる「15歳のグローバルチャレンジ」は、すでに中学受験生の保護者の関心も高いという。橋本教諭は今後、どの教員でも授業ができるよう教材を整え、「数学以外は興味がない」といったタイプの生徒を巻き込む仕掛けも考えながらさらにブラッシュアップを図るという。

少し先の話になるが、今の3年生が5年生になった際は、彼らに会議運営を任せる予定で、「そのときが楽しみ」と橋本教諭は言う。今後、部活動だけでなく授業でも模擬国連がスタンダードになっていく同校。生徒たちのさらなる成長が期待できそうだ。

(文:酒井明子、注記のない写真:桐蔭学園中等教育学校提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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