特殊仕様があだに?消えゆく「列車内の自販機」 JR九州は3月末で終了、一方で存続する鉄道も

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車内の自販機は機械そのものにもネックとなる点があった。「既存の飲料自動販売機が特殊仕様であり、近年販売されている飲料ペットボトルサイズでは対応できず、商品の確保が課題だった」という。

東武鉄道の特急車内にあった自販機(編集部撮影)

つまり街中や駅などの自販機で一般的なペットボトル飲料を置くことができなかったということだ。近年の飲料自販機は取り扱い商品の多品種化が進む中で、この点も車内自販機の存続にはマイナスに働いたといえる。さらに、自販機の大きさにも問題があった。列車に搭載できるサイズの自販機の確保が難しかった。

東武の場合、自販機の終了とともに車内販売も終了した(実際には新型コロナウイルスの感染拡大によりすでに中止となっていた)。2017年登場の特急「リバティ」は当初から自販機がない。一気に車内での飲料の入手手段がなくなってしまったことになる。

設置を続ける鉄道会社の事情は

一方、列車内の飲料自販機が残っている鉄道会社もある。西武鉄道は、特急「小江戸」に使っている「ニューレッドアロー」に自販機がある。ただし、新型特急の「Laview(ラビュー)」は設置していない。

西武によると、「ニューレッドアロー」では一定の利用があるので設置を継続しているという。「Laview」に設置していないのは、「車両搭載用の自販機は通常のものとはサイズが異なり、入手が困難であること」や、駅構内のコンビニ店舗や自販機などの充実、乗車時間が比較的短いことなどを「総合的に勘案」した結果という。販売面での理由だけでなく、列車内という特殊な場所だけに、やはり自販機を設置すること自体にも課題があるのだ。

小田急電鉄のロマンスカー「EXEα」車内に設置された自販機(撮影:尾形文繁)

今も車内自販機が充実しているのが小田急電鉄だ。最新型のロマンスカー「GSE」にもあり、近く定期運行から引退する予定の「VSE」以外は全車種に設置している。小田急はウェブサイト上の時刻表でロマンスカーの使用車種を案内しており、自販機を含む車内サービスの有無も表示している。以前は車内販売があるかどうかもわかった。

小田急によると、自販機設置の理由は「すべての列車に車内販売が乗車できるわけではないため、サービスの一環として」だ。つまり車内販売の代替手段であったわけだが、小田急は車内販売を2021年3月12日をもって終了した(実際にはコロナ禍でこれ以前から中止していた)。

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