親の格差が生む教育格差、家庭の重要性増す背景 社会学者・山田昌弘、多様な能力が必要な時代に
優秀でやる気のある人ほど都会に出てしまう。こうした状況は日本経済にも大きな影響を与えかねない。それによって地方と都市の格差が加速し、教育格差も拡大していくからだ。では、教育格差を学校という現場でサポートしていくことはできるのか。
「今も学校の内外で、ボランティアで子どもたちが学ぶ場を設けていると思いますが、そこにやって来る子どもたちの親は大抵が相応の学歴がある人たちなのです。ただ、ここで強調したいのは、そうしたボランティアの場では学びの中身というよりも、子どものやる気を引き出すことができるかどうかが重要なのです」
昔なら貧困に耐えながら、親のようになりたくないからと、子どもが自覚的にやる気を引き出すこともあった。しかし今はとりあえず豊かに生活できている分、そこまでのやる気が子どもたちの内面からは生まれてこない。日本は格差社会といっても、絶対的貧困ではなく相対的貧困といわれる状況にある。飢えることなく、とりあえず楽しいものがあふれる社会では、かつてのように貧しくとも立身出世を目指すというような子どもたちが少なくなっているのだ。
日本がなかなか変われないというのは、よく指摘されること。しかし、日本を取り巻く周囲の環境は変わっていく。このまま格差を拡大させながら、日本は徐々に衰退していくしかないのだろうか。そうしないために、教育は何ができるのか。山田氏がこう語る。
「少しでも子どもにやる気があれば、それを伸ばしていく。先生などが親代わりとなって、面白いこと、興味のあることを見つけて、モチベーションを高めながらやる気を育てていくしかありません。学校でもICTを使えば、それほどお金をかけることなく英語などの勉強をすることができます。そのためにも、先生たちは子どもたちに今まで以上に寄り添っていく。そうやって子どもたちのやる気に火をつけることが大事になっていくと考えています」
親の所得が子ども世代に影響し、格差が再生産されている。貧困をなくす経済的な支援が行政に求められることはもちろん、子どもを社会で育てるという意識が、ここ日本にも必要ではないだろうか。学校も、世の中の変化に合わせて必要となる能力が変化していることを理解し、柔軟に変わっていくことが求められる。
(文:國貞文隆、注記のない写真:Graphs/ PIXTA)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら