全国2000校調査、「高校1人1台端末」の格差事情 「ネット環境に不満」が、国公立は私立の3倍
インターネット回線は、継続的な見直しが求められる
GIGAスクール構想によって「1人1台端末」が配備された小・中学校では、実際にクラス全員で授業中に使ってみたところ、インターネットにつながらなかったという話をよく聞く。新型コロナウイルスの感染拡大により、まずは「1人1台端末」の整備を急いだことから、同時接続した場合のネットワーク環境まで十分検証したうえでスタートできた学校が多くなかったからだ。
今回の調査では、普通教室で生徒用端末をインターネットにつなぐ際の接続品質についても聞いている。すると国公立は快適と回答した学校が23%、普通41%、不満23%、そもそも利用していないが13%。一方、私立は快適36%、普通38%、不満8%、そもそも利用していないが19%だった。ネット環境に不満という回答が、国公立は私立の約3倍にも上ることが明らかになった。その理由としては、「インターネットにつながりにくい」「回線速度が遅く、動画などが活用できない」という意見が多かった。

私立では85%が学校からインターネットに直接接続しているのに対し、国公立では11%が直接接続、85%が教育委員会や自治体のネットワークを経由して接続していた。従来PC教室や職員室から少数でアクセスすることを前提に設計されたものであり、これが回線速度や品質の低下を招いている可能性がある。
今後の「1人1台端末」整備を見据えたインターネット回線のあり方について聞いた設問では、「見直す必要がある」とした回答が国公立・私立問わず約半数に上った。現状、学校から直接インターネットに接続している私立でも、回線帯域や本数の増強を検討しているとみられる。
一方、「1人1台端末」が完了している学校で、インターネット回線を「見直す必要がある」と回答した国公立は52%、私立は37%と若干低かった。端末の整備で先行した私立では活用を進める中で、インターネット環境の見直しも同時に進めてきたためとみられる。だが今後、現状課題を感じていない学校でも、端末配備が進み活用が進む中で、インターネット回線の課題が表面化し、見直しに迫られることも考えられるだろう。
MM総研執行役員の中村成希氏は「端末費用の保護者負担を背景に、授業のデジタル化の目的が学校・保護者に十分に伝わらず、その結果環境整備が遅れるということでは本末転倒。デジタルインフラ整備の先にある学びの活用に何が期待され、どのような目標を持つのか、その入り口となる整備原資はどうあるべきか。 政府、自治体には引き続き議論を尽くして教育現場に説明していく責任がある」と話す。
こうして高校で、1人1台端末の整備が急がれる背景には、GIGAスクールによって整備されたICTを活用した学びを途切れさせないことにある。中学校まではPCを日常的に使っていたが、高校に入ったらパタリとなくなったというのでは全国的に端末を急いで整備した意味がない。ICTの整備状況が学びの格差につながらないよう、保護者への認知浸透を図りながら理解を得るための工夫が自治体には求められる。
(文:編集チーム 細川めぐみ、注記のない写真:ふじよ/ PIXTA)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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