高校で来年始まる「総合的な探究の時間」って何? 元祖・堀川高校の事例に見る探究活動の実際
しかし、高校生の目前にある大学受験という現実問題と探究との折り合いをどうつけるのか。米田氏は、14年度の全国学力・学習状況調査の結果で、総合的な学習の時間で課題設定からまとめ・表現まできちんと指導した小中学校は平均正答率が高い傾向を紹介。東京大学のアドミッション・ポリシーが「学校の授業の内外で、自らの興味・関心を生かして幅広く学び、その過程で見出されるに違いない諸問題を関連づける広い視野、あるいは自らの問題意識を掘り下げて追究するための深い洞察力を真剣に獲得しようとする人を歓迎する」としていることや、「探究」を推進する高校が難関大学の総合型選抜で多くの合格者を出していることに言及。探究は大学進学の面でもメリットがあることを示した。
主体性を引き出し、答えのない問いに挑む姿勢を育む
次に「探究」の導入で、進学実績を飛躍的に伸ばしたことでも知られる京都市立堀川高校の取り組み事例を、同校教諭の紀平武宏氏が報告した。堀川高校が人間探究科、自然探究科を新設したのは1999年。この改革後、初の卒業生を送り出した02年に、国公立大学の現役合格者がいきなり20倍近くに増え、私学優位の「私高公低」が顕著だった京都での公立高校躍進は「堀川の奇跡」として注目された。

京都市立堀川高校 教諭
(写真:本人提供)
同校からのメッセージは、生徒の主体性を原点とする「すべては君の『知りたい』からはじまる」。その主体的な学びの柱が「探究基礎」と名付けられたカリキュラムだ。同校は探究について「用意された答えのない問いに対して、正しいと思われる答えを導き出す営み」と定義。探究基礎は、その問いに対処するために必要な姿勢・知識・技術を身に付けることを目的とする授業と位置づける。知識・技術の習得と、探究活動を通して知識を生かす経験を繰り返すことを相互に繰り返す「二兎を追う」学習によって、主体的に学び、自立する18歳を育てることが目標だ。
それは入学直後から授業開始までの2日間のイントロダクション「探究DIVE」で始まる。あらかじめ学校側が用意したテーマについて4〜5人の班で探究活動を行い、その成果をポスター発表する。今年のテーマは、「聴覚で音源の位置を特定する条件」「桜の花びらがゆっくり落ちる理由」「早口言葉を話すのが難しい理由」だった。紀平氏は「2日間で発表までできる難易度で、探究の奥深さを感じさせるテーマ設定はなかなか難しい」と語る。
探究基礎は1年の前・後期と2年の前期までの1年半をかけて行われる。1年前期の「HOP」では、入学前の春休みの課題として書いたスキット(寸劇)の発表からスタート。講義で、探究の進め方や基本的な情報収集法、ポスター発表の心構えや論文の書き方を習得し、実際にポスター発表にも挑戦。下記の「探究五箇条」を浸透させることを目指す。
一、 常識を学べ(知らないことを知る)
一、 常識を疑え(鵜呑みにせず、クリティカルシンキングする)
一、 手と頭を動かせ(考えて、やってみる)
一、 朋(とも)と愉(たの)しめ(仲間と高め合う)」
※カッコ書きは「探究五箇条」を基に東洋経済が解釈を付加