50%が上位校「エシカル就活」を生んだ22歳の正体 SDGs時代、企業や学校が知るべき「若者の視点」

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NPOなどの非営利セクターではなく、広告掲載やデータベース使用料を収入源とする“ビジネス”にこだわったのは、ビジネスこそよりよい社会を実現できる武器だと考えたからだ。

「やはり実家が八百屋で、みんなの顔が見えてみんながハッピーになる循環を見てきた原体験が大きいです。一方、ビジネスは悪者扱いされてきました。実際、企業が事業活動を止めても気候変動や海洋汚染は元に戻ることができない状態になっています。でも、それだけ社会的インパクトがあるからこそ、仕組みや構造を変えたら、社会課題を解決していくうえでめちゃくちゃ強力なプレーヤーになると思うのです」

「上位大学の学生」の登録が半数を占める理由

「エシカル就活」の企業登録数はこの1年弱で23社にまで増えた。大企業から中小企業、スタートアップ企業まで幅広い。ユーグレナやボーダレス・ジャパンといったいわゆるソーシャルビジネス企業だけでなく、LIFULLや丸井グループ、メンバーズ、ポーラなど業種もさまざまだ。

しかし、登録企業は厳選しており、独自の審査基準を通過した企業のみを掲載。例えばビジネスモデルは循環型にシフトしているのか、いわゆるマテリアリティー(自社の重要課題)の分析をどこまでしているかなどもチェック。企業ビジョンやパーパス(存在意義)も重視しており、これは企業担当者との面談を基に判断していく。とくにESG(環境・社会・企業統治)情報の発信にまで手が回っていない企業については、ビジョンをしっかり見るという。

勝見氏も含まれる「Z世代」(1990年代後半~2000年代生まれ)の社員だけでなく、有識者も選定に関わる。現在、一般社団法人エシカル協会代表理事の末吉里花氏や、パタゴニア元日本支社長の辻井隆行氏のほか、複数の大学教授などが顧問として後援している。今後は、エシカル企業で働く人の本音を「見える化」するコンテンツも作って透明性をより高めたいという。ここまで力を入れるのは、見せかけの取り組みで実態は異なる、いわゆる「ウォッシュ」を見極めるためだ。

「ただ、僕たちは非エシカル企業を潰したいわけではない。目指すのは、『産業界のサステイナビリティートランスフォーメーション』の実現。だから、表面上の社会善をやっていると感じた会社に対しては、SDGsについて改めて考えてもらい、再度対話の機会を設けることもしています。ビジネスが社会に与える負の側面にも目を背けず、一緒に考えてほしいからです」

「エシカル就活」では、学生は「取り組んでいる社会課題」のカテゴリーから企業検索ができるほか、企業に対して「いいね」やコメントを送ることが可能。企業は、気になる学生にダイレクトメッセージを送信できる

一方、学生の登録者数は約1500名。早稲田、慶応、上智、ICUなどの上位大学の学生が50%を占める。「グローバル学部がある大学の学生が多い。英語で情報をキャッチアップできる学生は、サステイナビリティーの取り組みが進んでいる海外と日本の意識の差を感じるのでしょう」と、勝見氏は分析する。

また、登録者全体の70%以上が、留学、長期インターン、起業やNPOの立ち上げなどの経験者だ。つまり、「これから社会課題をやりたい」のではなく、すでに何らかの行動を起こしている登録者が多いという。

「社会課題を軸に自ら行動し、PDCA(Plan、Do、Check、Action)サイクルを経験している学生は企業側にとっても魅力的に映ると思います。実際、22年卒では丸井さんの内定者の4%が当社を介した採用であるなど、大企業からスタートアップ企業までマッチングが実現しています」

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