部活や授業「eスポーツ」取り入れる学校増える訳 論理的思考、問題解決力、コミュ力育つは本当か
さらに、eスポーツ自体に教育的効果があるという調査研究があります。ゲームといえば、これまで学習の障害になるとネガティブな視点で見られてきましたが、eスポーツは有力な教育コンテンツとして、とくに論理的思考や問題解決力をはじめとしたSTEAM教育、またコミュニケーション力を身に付けることができる。そうした点から、私たちはeスポーツを次世代の成長のツールとして採用しています」

北米教育eスポーツ連盟 日本本部(NASEF JAPAN)統括ディレクター/北米教育eスポーツ連盟(NASEF)eスポーツ戦略室チーフ
国内大学卒業後、スポーツ用品物流企業を経て渡米。米国の大学でスポーツ経営修士課程を修了後、ロサンゼルスを拠点にするスポーツエージェント企業で、選手のマネジメントや新規事業開発を担当。日本帰国後は、PR会社にてスポーツビジネス事業担当を経て、エンターテインメント産業やエリア開発領域などで、スポーツIPを活用した事業開発に従事。2019年より北米教育eスポーツ連盟に参画。長年のスポーツビジネスの知見を生かし、eスポーツを通じた次世代の可能性の拡大と成長の促進に取り組む
今、日本でもeスポーツを中学校や高等学校の学習現場、部活動などで採用する学校が増加していることをご存じだろうか。実際、NASEFではeスポーツを学習や部活動で採用した学校数について調査している。18年と21年の学校数を日米で比較すると、米国では72校→1682校、日本でも71校→285校と米国には及ばないものの、日本でも増加傾向にあることがわかる。
「これはeスポーツの学習効果について学校も相応の認識を持っていることを表していると考えています。NASEF JAPANとしてもeスポーツを普及させるというよりも、生徒の成長を促進する学習ツールの1つとして活用していきたいと思っています」
eスポーツを学校の学習現場に導入する効果とは
では、こうしたeスポーツを学校の学習現場に導入することによって、どのような効果が生まれるのか。その効果の1つが、生徒たちの知能向上や社会性・情動性を育むソーシャル・エモーショナル・ラーニング(社会的感情学習)の向上だという。この効果が高まることで、生徒たちにある変化が見られた。
「米国の成績評価指標であるGPA(Grade Point Average)を使って、eスポーツ導入前後の変化について研究をしました。その研究では、生徒がeスポーツをやる前よりも、やった後のほうが、生徒の欠席率が減少していることがわかりました。また、その生徒たちの成績が上がったという結果も見られました。つまり、eスポーツによって、学校での学習態度や活動がより積極的になり、その結果も表れやすいという効果を示唆していると考えられます」
日本でもeスポーツを学習ツールとして採用する学校が増えている。現在、NASEF JAPANに加盟している学校数は151校(21年9月30日現在)。全国の公立、私立高等学校、または国立高等専門学校などがeスポーツを学習の現場や部活動として活用し始めているのだ。生徒たちがeスポーツを好きなことはもちろんだが、一方で課題もあるという。
「先生たちがeスポーツを部活動としてどのように運営すればいいのか、教育のツールとしてどう使えばいいのか、学校の広報活動としてeスポーツをどうアピールすればいいのかといった問い合わせが増えており、私たちもウェビナーや勉強会を開くなどして対応しています。またNASEF JAPANでは、こうしたeスポーツを導入した学校を横でつなぐ機能も果たしたいと、先生向けのカンファレンスや交流会を開くなど、学習効果を蓄積できるようコミュニティー化も図っていきたいと考えています」