JR西の長距離列車「銀河」、残る課題は客層の拡大 紀南の新ルートは人気だが、女性客が少ない

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ウエストエクスプレス銀河は、これまでバスやLCC等に流れて取りこぼしていた大学生などの若い層、女性層を鉄道旅行へ誘うことが発想の原点にあり、117系6両編成を徹底的に改造、改装して夜行運行にふさわしい瑠璃色の車体をまとう列車に仕立てている。

出雲市・下関・新宮方の1号車は1ボックスを1人で占有できるグリーン車、反対側6号車は主に2人用のグリーン車個室。2・3・5号車は普通車指定席だが、リクライニングシートのほか、クシェットと称する実質的な2段寝台席や、家族やグループ向けの桟敷タイプのコンパートメントも備わる。中間4号車はだれもが利用できるラウンジ車両「遊星」で、編成中にはほかにも各所にフリースペースが点在し、「彗星」「明星」などと往時の寝台特急を彷彿とさせる名も付されて心をくすぐる。

「地域との連携」を託された列車

一方、ウエストエクスプレス銀河には、JR西日本が地域との連携を深めたいとする思いも託されている。

復路は新宮12時発の昼行運転。夏の夕方が迫る周参見で海岸散策や地元のおもてなしを楽しんだ後一息つきながら白浜へ(紀伊日置ー周参見間、写真:山井美希)

今回の紀南運行の列車が走る紀勢本線和歌山ー新宮間では、2014年から「紀ノ国トレイナート」と称して、鉄道利用が激減している中で路線や駅を盛り立てる取り組みが行われてきた。地域の有志とアーティストが駅や列車をアート作品にして活気を呼び戻すプロジェクトで、JR西日本和歌山支社は駅舎や一般電車の車内を参加者により破天荒に改装してもらい、アート展示やバンド演奏、飲食などで学芸会のように楽しめる臨時アート列車「紀ノ国トレイナート」号を運転、沿線自治体も行政の境界や官民の隔てなくバックアップする形で年ごとの活動を続けている。

これに目を止めたのが「新たな長距離列車」の改装プランを託された建築士の川西康之氏(ICHIBANSEN/next stations代表取締役)である。

また、JRの中でも企画段階から和歌山支社長(当時)らの深い関与により、各地で地域との共生を必要とする中で同列車をフラッグシップとする考えが織り込まれ、単に車両を走らせるだけでなく、おもてなし等を通じた地元の鉄道への関与と、乗客による沿線への貢献という相互効果への期待が託された。このような意味において、今回の紀南運行は発想の原点を訪れる列車となった。

紀勢本線沿線では、JRとの協議の場で新列車構想が明らかにされた時点から熱烈なラブコールを送っており、紀南運行が決まった今年3月以後はウエストエクスプレス銀河受入協議会を組織してサービス体制を整えた。

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