目黒区「40分授業午前5時間制」20年で見えた成果 授業時数確保に加え学習面や働き方にも変化

学力向上が見られる学校もある。例えば、長年午前5時間制に取り組む中目黒小では、昨年度も区の学力調査で前年度より成績を伸ばしたというが、竹花氏は次のように分析している。
「午前に集中して学べることが、学力の向上につながるのかもしれません。また、下校時間も通常の学校より30分ほど早くなるため、子どもたちは遊ぶ時間が増えてストレス発散できたという声もありますし、教員や保護者も子どもの話を聞いたり、個別指導をする時間を増やしたりと十分なケアができるようになりました。その結果、子どもの心にゆとりが生まれ、学校でも落ち着いて学習に取り組めるようになったのではと思います」
こうした時間割によって、10分前後ずつ登校時間が早まり給食の時間が遅くなることから、「朝食をしっかり取るようになった」「生活リズムが整ってきた」という保護者の声が聞かれる学校もあるという。
「以前、他県で午前5時間制を行う自治体から『給食の時間が遅くなる』というご相談がありましたが、よくよく話を聞くと45分授業で実施されていました。40分授業で行えば空腹の問題は起こりにくく、『早寝早起き朝ごはん』の習慣化が期待できます」(竹花氏)
教員の「働き方改革」にも一定の効果が
午前5時間制は、教員にとってもメリットが大きい。子どもたちが早く下校するため、教員はそこで生まれた時間を会議や研修、授業準備に充てることができ、「働き方改革にもつながっていると言っていい」と竹花氏は言う。中目黒小学校校長の横溝宇人氏もこう語る。
「本校が7校時目まで授業をしたとしても、45分授業を6校時目まで行う学校と比べ20分くらい早く下校となるので、教員の精神的な余裕が増えた印象です。実際、45分授業の学校から異動してきて最初は戸惑うものの、しだいに慣れ『ゆとりができた』と言う教員は複数おり、中には退勤時間が早くなった教員もいます」

目黒区立中目黒小学校校長
(写真:目黒区立中目黒小学校提供)
しかし、授業時間が短くなったことで、デメリットはないのだろうか。
「大規模校を中心に図画工作や家庭科など2コマ続きで行う専科授業を午後に割り当てるのが難しくなったという声はありますが、本校では7校時目まで授業を行うことでこのデメリットを解消しています。その代わり、月曜日は全学年が午前で帰宅できる時間割にし、午後は会議やクラブ活動などの時間に充てています」(横溝氏)
また、1コマ40分と授業時間が短く、学びの時間をしっかり確保することが難しい点に関しても、さまざまな工夫を行っているという。
「例えば、体育科。跳び箱の場合、準備と片付けだけで10分ほど授業時間が削られてしまいます。そのため同学年の体育科の授業は、連続して行っています。そうすることで準備と片付けが1回ずつで済み、学ぶ時間の確保につながるのです」と、横溝氏は話す。