埼玉県コロナ禍の学校調査「学力低下」の可能性も ICT活用に課題、実験・実習や対話的学びに制限
・99%以上の小・中学校で年度内に教育課程を終えることができた
・実験・実習等が制限され実感を伴った定着が十分でない、主体的・対話的で深い学びに取り組む機会が持てないことを課題に感じる学校が多い
・だが、すべての学校で何らかの感染対策を行ったうえで「対話的な学び」を実施している
教員のICT研修が課題として浮上
こうした調査の結果について、埼玉県は今後の取り組みにつなげるための分析も行っている。
ICT活用に関する調査結果については、「教員間においてICT活用能力の差があるため、スキルを上げる研修やより具体的な指導に係る研修を実施する必要がある」「小・中学校ともに個別学習および協働学習で活用する学校が少ないため、1人1台環境を前提としたICT活用の推進を働きかける」「中学校は、小学校と比較しICT活用の割合が低く、すべての教科等においてICTの積極的な活用を図る必要がある」と同県は分析している。
また、教育指導に関する調査結果については、「大半の学校が授業ペースを速めるなどにより年度内に指導を終える見込みとなっていたが、速めたことにより児童生徒の学習の定着が十分になっていないことが懸念される」「各学校が感染予防対策を徹底し『対話的な学び』を継続していく必要がある」としている。
さらに埼玉県では、慶応義塾大学 教授の中室牧子氏の協力を得て「埼玉県学力・学習状況調査」とのクロス分析も行っている。それによると令和元年度の学力調査結果データと比較すると、小学校4、5年生の算数の学力が昨年度より低下した可能性がある。国語への影響は見られなかったという分析結果も公表していて、今後も「令和2年度の教育課程が学力に与えた影響」についての分析や「令和3年度埼玉県学力・学習状況調査結果」データとのクロス分析も引き続き行うという。
埼玉県教育委員会は4月、ICT教育推進課を立ち上げ、ICT教育支援体制を強化。「ICT活用プロジェクトチーム」を通じてICT教育の均質化を図る方針も示している。これまでに国や県が作成したさまざまな資料を用途に応じてパッケージ化するとともに、教科等の研修でICT活用研修のさらなる充実また優れた実践事例を周知していく。それにより各学校で1人1台環境を活用した個別学習、協働学習を推進。校内研修などと併せて教員のICT 活用能力向上にも取り組む考えだ。
新型コロナウイルスの感染拡大は、学校教育に大きな影響を与えた。だが、実際にどのような影響を与えているのか。学力への影響など、こうした埼玉県の調査は非常に興味深い。ほかの都道府県はもちろん、さまざまな調査が行われることを期待したい。
(写真:iStock)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら