子どもの学び「学校に丸投げ」解消に必要なこと 学校、家庭に続く第3の力、地域住民の奮闘

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学校ではどうしても、勉強や運動ができる子に注目が集まりがち。だからこそ、勉強や運動以外で光るものを持った子にもスポットが当たる場をつくりたいという思いがあったという。

「プログラミングは自分の部屋で1人で学ぶこともできます。けれど、どんなにスキルを持っていても、自分の世界に閉じこもってしまっては仕方がありません。大切なのは、プログラミングというツールを通して自己表現をし、他者との関わりを学ぶこと。それが糧になるはずです」(竹下氏)

地域の大人としてもっと主体的に関わりたい

プログラミングというツールを通して他者と関わる。それを後押しするのがサポーターの存在だ。サポーターとは、コーチと一緒に子どもたちの疑問や質問に答えるボランティアだ。竹下氏と共に運営を担っているNPO法人THOUSAND-PORT代表理事の鈴木篤司氏はその意義をこう話す。

鈴木篤司(すずき・あつし)
NPO法人THOUSAND-PORT代表理事 墨田区を拠点に、次代の社会の担い手である若者を地域と共に育む対話やワークショップの企画、運営を行う

「サポーターを務めてくれたのは、主に墨田区内の高校のパソコン部の生徒です。子どもたちにプログラミングを教えることで彼らの理解やスキルが高まりますし、子どもたちにとっては『頑張れば自分もお兄さんやお姉さんみたいになれる』というロールモデルになる。すると、その子どもたちが大きくなって、今度はサポーターになる。そうした生態系をクラブの中につくりたかったのです」(鈴木氏)

QUESTには区外から通っていた子もいるが、多いのは墨田区在住の子どもたち。そもそもなぜ、墨田区にこうしたクラブをつくったのだろうか。鈴木氏が言う。

「私と竹下さんが墨田区在住だからです。私は東日本大震災の後、岩手県大槌町で復興のお手伝いをさせていただきました。その時に強く感じたのが、『自分の住む街を自分でよくしていきたいと思う人が増えたらいいな』ということ。また、勉強だけでなく生活習慣や道徳など、本来は学校教育の範疇外である子どもの学びや育ちに関わる一切を学校に丸投げにしているのではないか、という課題感も持っていました。私にも子どもがおり、親としても一大人としても、子どもの学びや育ちに主体的に関わり、コミットしていく必要があるだろうなと。当時は東京の城東地域に小中学生がプログラミングを学べる場がなかったこともあり、竹下さんとクラブをつくろうということになったのです」(鈴木氏)

幸い、地域のハブとなっていたシェアオフィスが2人の趣旨に賛同し、場所を提供してくれて、15年10月から本格的にスタートすることになった。学校や家庭ではなく、地域が子どもの学びの一端を担う。その意義は「当事者性」だと竹下氏は言う。

「今の変化のスピードは、学校の先生だけでは対応しきれないと思うんです。ちょっとしたスキルがある人、それを求めている人をマッチングできる土壌があれば、人材の掘り起こしとともに、リソース不足を補うことができるのではないでしょうか」(竹下氏)

こうして地域住民の手によって大切に育てられてきたプログラミングクラブは、20年に大きな転機を迎えることになる。コロナ禍によって、集まって開催することが難しくなったのだ。3月と4月にオンラインで開催したが、参加者は激減。その理由を竹下氏はこう分析する。

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