教職課程見直し「ICT活用指導力」は上がるのか 現場も改革急務!今も「ガラケー」愛用者が…

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昔から教育の世界は、知識などのコンテンツを重視してきましたが、今は学び方や思考力といったコンピテンシーをベースにした教育が求められています。ICTはまさにコンピテンシーの育成に貢献する要素。例えば、学校で調べたことを発表する際、模造紙にまとめる国と、パソコンでプレゼンテーション資料にまとめる国では、社会人になってからの成果の出し方に差が出てくると思いませんか。こうした観点からも、教育の情報化は、各教科の指導法とICTの接続が大きなカギになると考えています」

「今のままでは子どもたちに恨まれる」

政府は今、教職課程におけるICT活用に関する内容の修得促進に取り組んでいる。2021年1月には、中央教育審議会 初等中等教育分科会 教員養成部会の第120回会合において、ICT活用に関するコアカリキュラム案「情報通信技術を活用した教育に関する理論及び方法(仮称)」が示された。現在の「教育の方法及び技術」に含むとされていた「情報機器及び教材の活用」を切り出して新たな事項を追加し、1単位以上の修得を求める内容となっている。これについて佐藤氏は、「とてもいい方向性」だと評価する。

「ICT活用に特化したカリキュラムが新たに追加されるということは、それくらい今の日本は教育の情報化においてまずい状況にあるわけです。ただ、今後これに伴い、各大学では人材確保も課題になってくるでしょう。単なる技術屋ではなく、教育をちゃんと理解しているITの専門家を採用で見極めることが成否のポイントになると思います」

一方、現状としては教育現場にも課題があるようだ。

「本学では教育実習で必ずICTを使うことを課しており、学生たちのICT活用指導力が向上したという結果が出ています。しかし、本当の成果が出てくるのは数年後でしょう。なぜなら、現時点では教育実習先や教員になったときの赴任先がICTを生かす環境になっておらず、せっかく身に付けた力が発揮できないというケースも多いからです」

そこには端末整備という環境要因だけでなく、教員のICTリテラシーにばらつきがあるという問題もあるようだ。例えば佐藤氏が最近、iPadを導入した学校に研修講師として訪れた際、iPadを初めて触ったという教員が半分を占めていたという。中にはいまだに“ガラケー”を使っている教員も。

携帯電話のアップデートができていない教員が一定数いるという話は取材でもよく聞くが、教員がICTへの関心を高めるにはどうすればよいのか。佐藤氏は、「現状認識」がカギになるのではと考えている。

「現場の先生たちは、直ちに子どもたちが置かれている状況をきちんと認識したほうがいいと思います。OECD(経済協力開発機構)の『生徒の学習到達度調査(PISA)』では、パソコンを使った試験方式のCBT(Computer Based Testing)になってから日本の子どもたちの読解力が落ちました。将来的には大学入学共通テストや通常の学力調査にも、CBTが導入される流れにあります。つまり、パソコンを活用して思考できないと入試が突破できないのです。ICT教育を放置したままでは、将来子どもたちに恨まれるでしょう」

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