世界30カ国「英語で交流授業」する先生が凄い 都市と地方の教育格差ICTで縮めるのは可能か

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教員の工夫と生徒の頑張りで、できることがある

ケニアとの交流授業以降も、バーレーン、エジプト、スウェーデン、チェコ、マレーシア、ロシアなど、30カ国以上との海外交流授業を実現している。今年度は、新型コロナウイルスの感染拡大などでなかなか実施できていないというが、堀尾氏が顧問を務めるESS(English Speaking Society)部の活動で実施するなど海外交流を続けている。

海外交流授業を行うためには設備や相手の学校の先生とのすり合わせなど、越えるべきハードルはいくつもある。それでも堀尾氏が続けるのには理由がある。

堀尾氏は「非英語圏の国の人たちとも英語を使えばコミュニケーションが取れること、自分たちと違う考え方や習慣などに触れながら、異質に思えるものを受け入れる姿勢を養っていきたい」という

「生徒に、外国の方と接する機会をつくってあげたいんです。また、都市部なら進学先や予備校などにもアクセスしやすいですが、地方だとなかなかそうはいきません。私立高校や大学では留学する子もいると思うのですが、地方の公立校にはあまりいません。だからこそ、教員の工夫と生徒の頑張りで英語を話したり、それを通じて多様性に触れる教育をしたかったんです」

その思いの原点は、堀尾氏自身の体験だ。中学の英語の授業で、自分だけALTの先生の話がわからないことに気づいた。周りは英語の塾に通っていたが、堀尾氏にその選択肢はなかった。そこで、雑誌のペンパル紹介に応募し、海外の同年代と英語で文通を始めたという。

「自分の言いたいことを書くのも、来た手紙を読むのもすごく楽しかったですね。それに、文通することで授業の予習復習が完璧にできていたように思います。というのも、来た手紙の文中にwhoとかwhichと書いてあるけど、どういう意味かわからないときがあって。すると、翌日の授業で関係代名詞を習って『こういうことか!』とわかったんです。わかると自分でも使いたくなって、早速手紙を書く。その繰り返しでした」

いわば文通という自主的なアクティブラーニングによって、英語の成績が学年トップクラスにまで伸びた。自信と興味が湧いた堀尾氏は、現在の勤務先である県立米原高等学校の英語コース1期生として入学。塾や予備校に通うことなく神戸市外国語大学に入学した。

「私は留学経験がないのですが、高校時代の英語コースの先生が『英語は日本にいても話せるようになる。だから、そのためだけに留学しても意味がない』とおっしゃっていたんです。日本に英語が入ってきたとき、英語は海外の情報や知識を学ぶ手段だったはず。海外交流授業は、そこから一歩進んだものだと思っています。海外交流授業のとき、私は生徒に『君らは40人おるけど私は1人やから、困ったら君らでなんとかしなさい』と伝えて、ファシリテーターに徹します。すると、相手の英語を聞き取れなかった子がいたら、聞き取れた子が教えたり、お互いに助け合って自分たちで何とかしようとするんです」

公立学校の生徒と世界をつなぐためのコツ

海外交流授業では、文字情報を読んだとき以上に理解が深まることがあるという。

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